鏡花水月
□第二訓
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どれくらい時が過ぎた頃か、神威は紫音を見た。
それにつられて紫音も神威を見る。
「なるほど。」
『何が?』
紫音は首を傾げる。
「俺が来る時、やけに天人たちが騒いでたんだ。それに、いつも人通りが少ない通路にも今日は何人か居たし、お前もしかして後をつけられていたんじゃないの?まぁ俺を見た途端、奴等どっか行っちゃったけどね。」
神威はソファの上で胡座をかく。
紫音は片眉を上げると視線を窓に戻した。
『だから、わざと遠回りして撒いてきたんだ。』
「そんな格好でいるからだよ。」
『あたしが何着ようとあたしの勝手だろ。』
「そんなんじゃ…」
神威はスッと紫音に手を伸ばした。
紫音はその手を横目で見る。
肩に触れそうなところで、神威の手はピタリと止まった。
「いつ襲われても知らないよ?」
『……その時は返り討ちにしてやるよ。』
紫音は鼻を鳴らす。
神威はその紫音の眼を見てクスクスと笑った。
「いいね、阿伏兎が“過保護”になるわけだ。」
『最近やたらうるさいからな、アイツ。』
「俺と居るときもしょっちゅう言ってるからね。アレ、やめさせてくれない?そろそろウザイんだけど。」
『知るか。てかアンタ上司だろ、自分で言えよ。』
紫音は阿伏兎の顔を思い出したのか、ククッと喉を鳴らす。
そんな紫音を神威は見つめると鼻で笑った。
「紫音も大人になったってことだね。」
『あ?そりゃアンタもだろ。こないだまであたしの方が背高かったし。』
「あはは、確かに確かに。あー…もう何年になるかな、お前に会って。」
『……………….….…。』
「……….………….…。」
『………….…アンタもそういうこと考えるんだな。』
紫音は少し驚いた表情をする。
「心外だな、聞いただけだろ。で、何年?」
『……分かんねーよ、いちいち数えてないし、覚えてない。』
紫音はそう言いながら、うーん、と背伸びをして神威と同じように胡座をかいた。
すると神威は当たり前のように、その太股を枕代わりにゴロンと横になった。
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