鏡花水月
□第三訓
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辺りを見渡せば、五十近く居た天人も立っているのは数人。
その数人も時を待たぬ間に血を噴いて崩れ落ちた。
『撃っていーぞー。』
場に似合わぬ声色で紫音が言うと、一番隊の団員が屋外の空に向かって何かを発砲した。
『よし、んじゃ次。お前らドジ踏んで死ぬなよー。』
そう言った紫音の目の前には二股に分かれた通路。
副隊長の周瑜が目配せすると、紫音はコクリと頷いた。
一番隊は紫音が先導するグループと、周瑜が先導するグループの二手に分かれてそれを進んでいく。
幾つものドアが並ぶ通路。
バイオ○ザードやないかーい!と思わずツッコミそうになるほど、次々と天人が飛び出してくる。
「死ねェエ!!!」
迫ってきた斧をヒラリと避けると、床に手を付いて天人の顎を蹴り上げる。
その衝撃に天人の脳は揺れ、簡単に倒れた。
紫音はその天人の頭部を蹴り飛ばすと、目の前で腰を抜かして震える天人の命も瞬時に取った。
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「お、うまくやったな。」
倉庫から上がった赤い煙に阿伏兎はホッと胸を撫で下ろした。
先程、紫音の指示で団員が発砲した信号弾だ。
「別動隊も突入させろ。」
「はい!」
連絡員が出ていくのと入れ違いで操舵室へやって来た神威は、ジッと倉庫を眺める阿伏兎を見て口角を上げた。
「そう言えば…ねえ、阿伏兎。お前、珍しく食堂で暴れたらしいじゃないか。」
その言葉にピクッと反応する大きな背中。
神威はククッと喉を鳴らすと続けた。
「よっぽど飯の味が悪かったのかな?」
「………さあな。」
わざとらしい物言いに阿伏兎は苦笑いを浮かべる。
「ま、いいさ。お前が紫音にうるさいのは今に始まった事じゃないしね。」
その言葉にバツが悪そうな顔をする阿伏兎を見て機嫌が良くなったのか、神威は鼻歌を歌いながら腕に包帯を巻き始めた。
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