星河一天

□第一訓
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薄暗い廃墟の隅で、鳴り続ける腹を抱えしゃがみ込む



『……ッ…ッ……』



雨音が子供のすすり泣く声を掻き消す


この空腹を満たすには、もう一度あの罵声と貫くような視線の中を駆け抜けねばならない








死ねば楽になれるだろう



死ねば、ここよりもマシな場所へ行けるかもしれない






しかし、この子供に「死」という選択はない


何故ならば、生きる術を教わっていない子供は「死」を知らないからだ

反対に「生きる」ということも知らない




無知な子供には、泣くことしかできないのだ



「ビービーうるせェぞ、テメェ。」


廃墟の奥から、低い声が聞こえた





『…ッ。』



涙はピタリと止まり、本能の指示で臨戦体勢をとった


声がした方を凝視する



ガサッと何かが動く音がして足音がゆっくりゆっくりと近付いてくる


子供の目は鋭く、そちらを刺し続ける。


やがて足音が止まり、姿を現したのは子供と似たような格好をした初老の男だった




「…はぁ……なんだぁガキ…テメェ一人か?ちょいとイイ所に連れて行ってやろう。」



歯抜けの口でそう言った男は急に迫ってきて腕を掴む





『ヴガァーーーッ!!』


「暴れるな!!」


奇声を上げジタバタともがく子供を抑え込もうと男が腕を回した時、隙をついて男の顎を思い切り殴った



「グッ…!」


子供とは思えないその威力に男はよろめき、顎を押さえながら目の前にいる小さな者を舐めまわすように見る



「…怪力に、その白い肌……テメェ、まさか、、ククッこりゃ上玉が転がりこんできたもんだ。これでまた暫く遊んで暮らせる……。」


ぶつぶつと不気味に呟いた男は、再び捕まえようと迫ってきた








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