星河一天
□第三訓
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それから数日間。
麻酔を打たれては体のあちこちを検査され、採血ももう何本されたか覚えていない。
体の芯まで伝う寒さ。
押し迫る空腹。
そして、いつからか漂ってくるようになった鼻を刺す異様な臭いと、朦朧とする意識の中に響く奇声。
牢の中でうつ伏せで倒れたまま、どれくらい時が過ぎただろうか。
水も食料も与えられないまま、ただ衰弱してゆくのを感じていた。
子供の檻の前に、初老の男がやってきた。
高価そうなタキシードに身を包み、整髪料でピッチリと固められたオールバックはピカリと光っている。
「……そして最後に。これはかなり希少価値が高いです。」
子供は閉じていた瞼を持ち上げた。
「約半月前に独自のルートより入手した、夜兎の子です。」
「ほぅ……夜兎の子か……」
初老の男の他に、静かで落ち着いた声が聞こえた。
声質からして、かなり年を取っているように感じられる。
「健康状態は。」
「現在は麻酔を打っているためあのように寝ておりますが、大変良好です。」
「純血種であろうな?」
「勿論で御座います。DNA、血液、皮膚細胞に至るまで入念に検査を致しましたところ、同血族交配型で間違いないかと。」
真ん丸な目を向ける子供を見ながら、老人は数回頷いた。
「うむ。ではワシのコレクションに加えよう。サインはどこで?」
「ありがとうございます!直ちにご用意致します!」
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