皓月千里
□第一訓
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紫音は黙ったまま、万斉の言葉を待った。
「其方の主、神威殿とは一体どのような人物か。」
『…何故そんなことを聞く。』
紫音の目つきが鋭く尖ったのをみて、万斉は少し顎を引いた。
「言葉が足りなかったか、神威殿を疑っているわけではござらん。」
『…ならば、足りなかったのはあたしの方だ。
何故“あたしに”そんなことを聞く。大してよく知りもしないヤツ相手に、よくそうも無防備な問いを投げれるもんだな。もしあたしがこれを団長に話せば、必死こいてようやく手に入れたこの夜兎の力を失うかもしれないとは考えつかなかったのか?侍って奴は頭も足りねェんだな。』
嫌味ったらしく言った紫音に、万斉はフッと口角を上げた。
サングラス越しに光る瞳は、どこか穏やかに見える。
『何がおかしい。』
「大してよくもしらない、確かにそうでござる。しかしその僅かな中に、拙者が其方に確信した部分がある。」
『…何が言いてェ、ハッキリ言いやがれ。』
「其方は、お人好しでござるな。」
『は?』
オヒトヨシ
初めて聞いた言葉に、紫音は顔をしかめる。
言葉の意味は分からないが、万斉の笑みがなんかムカつくということで少し距離をとって戦闘態勢に入る。
「何故そうなる。待て、争う気はござらん。」
『お前たち地球人は、よく聞き慣れない言葉を使う。』
「え?使わない?お人好しって。え?言うでしょ普通に。」
『何語だ。訛りがひでェんだよ、おのぼり。都会では共通語を話しやがれ。』
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