皓月千里

□第五訓
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遊庵が求めていた生活とはかけ離れているだろう。



けれど、彼が望んでいたことの一つを叶えられて少しだけ満足している。






ーーー地球へ行くこと






『地球は遠いから、仕事でしか叶えられねェけど。銀河にこんだけ溢れてる星の中で、なんの因果か、変な繋がりが出来ちまった。お前はこんなのでも喜んでくれるのかな...』










遊庵の言葉はいつも共にある




あたしがアイツの目になり
見て、知り、経験するとこで少しでも弔いになればと思う




一所懸命仕事をしたり、上司同僚部下や友達と遊んだり、休日にはひとり気ままに外出をしたり



自由の身で、そういう生活を送ること






あたしが生き続ける理由






全ては


檻の中に閉じ込められ、何ひとつ出来ず無念のうちに死んでいったアイツのため










なのに、







それなのに、









脳裏を過る橙の髪










読み終わり、閉じた本を置きながら、机に伏せた。




ポケットから水色の小袋を取り出す。




それをひっくり返すと、机上にコーンとネックレスがひとつ落ちた。

長いチェーンに一粒ついた、菫色の石が幻想的に輝く。






『これはあたしの人生じゃないのに。どうしてそうやって入ってくるんだお前は。邪魔すんじゃねェよ...』









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