皓月千里
□第五訓
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「あーあ、ツマンナイの。とっとと終わらせてさっさと呼んでよね。あと俺と殺り合う約束も忘れないでよね。それと...」
「心配しなくても全てが終われば相手をしてやる。」
「ふふん。これでも読んで待ってるよ。」
神威は「ことわざ辞典」と書かれた本を持っていた。
なんでもこの本には、地球の昔からの言い伝えなどが短い詩となって載っているらしい。
それなりに分厚いので、少しは暇つぶしになりそうだ。
高杉は煙をふぅと吐きながらホームへ視線を移す。
「あれは...万斉のやつ。
ようやく別れを惜しむ女が出来たと思いきや、まさかアイツたあね。」
「え?」
ホームの端で、万斉と紫音が立っているのが見える。
すると、万斉が紫音に何か水色の物を手渡した。
神威の目が少し見開く。
紫音はそれを受け取り、その後も二人は仲睦まじく何かを話しているようだ。
「...こいつァ参った。若い女を好むのは勝手だが、ありゃあちと若すぎやしねーか。」
キセルを咥え直しながら、高杉は横目で神威を見る。
「...なにも可笑しくなんかないさ。アイツだってもう“そういう歳”だ。」
神威はじっと二人を見つめたまま。
その横顔からは感情が消えていた。
鬼兵隊の艦隊が、春雨の拠点を飛び立った。
漆黒の宇宙空間をいく旗艦の中、高杉はほくそ笑んでいた。
「晋助?どうしたのだ。なんだ、その笑みは。」
「あの仮面の下。今ごろハラワタ煮えくり返ってんじゃねェかと思うとな、ククッ。」
珍しく楽しそうに笑う高杉に、万斉は訳がわからず首を傾げた。
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