皓月千里
□第八訓
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エンジンが壊れそうなほどに最高速度で移動した紫音たちの船は、伊賀上空へと到着した。
第七師団、鬼兵隊はすでに将軍派と交戦中のようで、武市の音声には爆音が混ざる。
《船を堕とされました、これより我々も戦場へ降ります。
神威殿には岩壁の外側へ向かっていただきたいのです。この伊賀の里・不知火は袋小路のような地形になっているのですが、忍(彼ら)の動きを逆手に分析すると、里の西に隠し通路があるのではないかと予測します。
阿伏兎殿たちは現在、北の方角で敵の主力と交戦されています。鬼兵隊からは万斉殿が加勢に向かいました。まぁ要らぬ助けだとは思いますが。》
『え、バンサイが?』
「シンスケは?」
《晋助殿は我々と共に岩壁の内側より、西へ向かいます。》
「了解した、俺たちもすぐに西の岩壁の外側へ向かう。」
《それではこれで通信を切らせていただきます。ご武運をお祈りいたします。》
李典がマイクのスイッチを切ると、武市は一礼をした。
武市との通信が切れると、紫音たちは不知火の地をぐるりと囲う分厚い崖の外側へ向かう。
「西ってどっちだ?」
『え〜あの辺じゃねェの…あっ!見ろあそこ!ウチの船!』
すでに顔や腕に包帯を巻いている紫音は、包帯の隙間から目を光らせた。
紫音が指した先には、北側の岩壁の内側に前方部分を突っ込み煙を上げている見覚えのある戦艦。
「あ〜あ〜大事な船がまたオシャカだ。」
「いいよ、阿伏兎に弁償させるから。」
『団長、あたしはあそこに行っていいだろ?』
「好きにすれば。」
紫音が見ると、神威は素っ気なく答えた。
『よーっしゃ、降りるぞ。おーい、周瑜!』
叫びながら急ぎ足で操舵室を出て行く紫音。
神威は横目でその後ろ姿を見送ると、すぐに前方へ視線を戻した。
「……ん??」
ふと李典は一点に目を凝らした。
「団長、あそこ。なんか、」
李典の視線の先、絶壁の外側に小さな洞窟のような穴が確認できる。
そしてそれを取り囲むような忍装束の影が複数。
「位置的にも間違いなさそうだね。」
「ショーグンの姿は見えないな、どうやらまだみたいだね。」
神威は指を組んでバキバキッと鳴らした。
「これでやっと忍と殺り合える。さて、どんな忍術を使ってくるのか見ものだね。」
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