皓月千里
□第七訓
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「やってる、やってる。すごいね、“忍”って奴等は。数人ずつ船に潜り込ませただけで、護衛艦もあの船も蹂躙し放題、まるで毛じらみだな。」
「何そのたとえ。」
船の先端にある砲台に座り、眼下の船上で起きている争いを見る神威の顔面には「すっごく楽しそう」と書かれている。
「侍以外にもあんな強い奴等がいたなんて、オラ、ワクワクすっぞ。」
「ワクワクしないで。仲間だからね、また変な気起こすなよ団長。」
神威の背後で、阿伏兎は呆れた顔を向ける。
「解ってるさ。今回はシンスケと勝負してんだ、誰が本物の将軍の首をとるかってさ。」
「俺達の出る幕もねェさ。忍だけで片づくだろう、見ろ。」
阿伏兎が示す先では侍に扮した忍たちが、雅な着物をまとった少女のすぐそばまで迫っている。
「あのガキ、確か将軍とやらの妹だったか。そんなビップにもう護衛一人ついてねェ、本丸も間もなくジエンドさ。」
将軍の妹・そよ姫は甲板から船内へと逃げ込む。
しかし忍たちもその後を追い、しばらくして一本の切り落とされた手が、甲板へと飛んできた。
すると、その手がドシッと踏みつけられる。
神威は即座に反応した。
船内の通路には無数の死骸。
刀を持つその人物は、飄々とした様子で甲板へと姿を現した。
その者の後ろで、そよ姫は手で顔を覆う。
「姫様〜見てくだせェ。あれがホルモン、あれがレバー、あれが…」
「キャアアアアやめてください!!」
「さて、次はハツかミノか。」
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