皓月千里
□第十訓
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春雨の旗艦に、第七師団の旗艦が突撃した。
それを見ていた武市変平太は、慌てて阿伏兎へ連絡を取る。
「阿伏兎殿!!単独で旗艦に突撃するなど正気ですか!!」
《俺に言うな俺に!敵の大将のツラが拝みたくなったんだとよ!!》
奇兵隊の船のメインモニターに映し出された阿伏兎の背後では、爆炎の中で師団員達が敵を次々と薙ぎ倒していく。
《敵の注意がこっちに向いている間に高杉つれて逃げな!また生きて会う事があったら団長(バカ)に説教の一つでもしてやってくれ。》
「阿伏兎殿、何を...!」
《嫌な予感がする。
以前の春雨だったら拠点を一つふき飛ばすような戦い方はしなかった。利害を度外視して俺達を潰しにかかってる。
全てを捨てる覚悟がなければ夜兎(オレたち)は潰さない。それをしってる奴が、夜兎の殺し方をしっている奴が春雨(むこう)についている。》
「い、一体それは...⁉︎」
《さあな、只者じゃないのは確かだ。そろそろ切るぞ、じゃあな。》
阿伏兎がニカッと笑うと、通信が途切れた。
武市の額に汗が浮かぶ。
もたもたしている暇はない。
阿伏兎が言うように、武力が著しく低下している鬼兵隊にとってこれは好機。
第七師団が与えてくれた一時の猶予を無駄にせんと、武市は直ちに戦線を離脱するよう部下に指示を出した。
旋回し始めた鬼兵隊の船を春雨の艦隊が追撃する。
「このままでは船が持たないでござる!」
「今すぐ避難艇の準備を!」
「晋助は拙者が!」
「頼みます!」
武市と万斉は強く頷き合った。
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