□ひなたぼっこ
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暖かな午後。
とくにする事はなく、ひなたぼっこ。

「あったかいなぁ…」

ベランダに寝そべりつぶやく。
遠くでは小さな子供たちのはしゃぐ声。

穏やかな午後を、みんなそれぞれに楽しんでる。

こんな時に考えるのはやっぱり
あの人の事。

「宍戸さんは今…何してるかなぁ…」

“テニスをしてるかもなぁ”
そんな事を考えてふと笑う。

誰よりもテニスで上を目指しているから。
誰よりも
テニスが大好きだから。

こんなテニス日和にラケットを握らないはずがないだろう。

どこまでも強気にボールを追い掛ける姿を瞼に描く。

彼は俺にとって
大好きな人で
憧れの先輩で
目標の人で…

そんな彼に追い付くべく立ち上がる。

この間彼に指摘された欠点の克服を目指そう。

ラケットを取りに行こうとしたら、彼に呼ばれる声が聞こえた気がした。

陽に照らされすぎてのぼせたかな?

ちょっぴりふらつく足に力を入れて歩きだす。







「ちょーたろー!!」

今度ははっきり聞こえた。

足がふらついていたのも忘れて、ベランダの端まで駆け寄る。
そこから下を見下ろせば
たった今考えていた彼の姿。

「宍戸さん!?」

俺の姿を見つけて笑みを浮かべる彼がいる。

「え!?ちょ…ちょっと待っててください!!」

そう告げて家の中を駆ける。

家族が出掛けていてよかった…
家族がいたなら確実に叱られていただろう。

そんな事を考えながら玄関のドアを開ける。



「よう」


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