□眠れない君に… 忍岳ver.
1ページ/4ページ


日付を越えて、短針は1に辿り着いた。

そんな時間に俺は押し慣れた電話番号を押していく。

あいつは必ず、
3コールで通話ボタンを押す。

プルルル…

プルルル…

プルルル…



『もしもし』

ほら、3つめ…

「岳人か?…眠れんかったみたいやな」
『…ん…』

岳人と付き合い始めて半年。
今や真夜中の電話は珍しくない。

かけるのは決まって俺。
そして岳人は3つめのコールで出る。

電話の内容はたいした事じゃない。
寝付けない子供にお伽話を聞かせるような、
そんな単調なモノ。

でも今夜の岳人は
ちょっと違っていた。

『侑士はこれからどこに行くんだ?』
「……え?」

岳人のいきなりの質問には慣れたつもりでいた。

慣れたつもりでいたけれど…

この質問にはどう返したらいい?
こんな時間にどこか出掛けるのかとかそういう事か?

『侑士は…俺のそばからいなくなるのか…?』

あぁ…
そういう事か…

「岳人…安心しぃや。俺はずっと岳人のそばに居る。いつも言うてるやろ?」

今夜の岳人は何かあったのだろうか?
いつも強気で、自分を真っ直ぐ貫くこいつが
何故こんなにも弱気で、不安でいっぱいになっているのか?

『侑士がいなくなるの…やだぁ…』

いけない…
岳人が不安に押し潰されてしまう…

俺は今もこれから先も
岳人のそばから離れるつもりなどないのに…

「岳人…大丈夫やって…いなくならへんよ。な?」

俺の耳には岳人の啜り泣く声しか聞こえない。

それでも俺は岳人が少しでも落ち着くように、
安心できるように語りかける。

「俺なぁこの先、大人になった自分を想像してみるとな、必ず岳人が隣で笑うてるんやけど…岳人はどない?自分の描く未来に、俺は居る?」




岳人の啜り泣きが





やっと


止んだ…


次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ