誰 愛
□第一話
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鉄パイプが静雄の頭に当たった衝突音と、独特の空洞音が鳴り響いた…
ニヤリ…と嫌な笑みが青年達の間に広がる。
当の静雄は、殴られたところ…額の右側を右手で抑えていた。
額の傷からは静雄の血が流れてくる。
その血は止まることなく流れ…抑えている静雄の手や顔、首筋、彼が着ている制服のブレザーまでもが、彼の血で紅く染められ…
やがてその流れは地面へと滴り落ちていく…
「何だ、これで終いか?平和島静雄ってのも大したことなか―…」
その青年の口から続く言葉が発せられることはなかった。
目の前にいる静雄が傷口から手を離し、自分達を睨みつけてきたからだ。
たったそれだけの事だと流してしまえばよかったのだか…
青年達は、そう出来なかった。何故なら…
「……………」
無言で睨みつけてくる静雄から、異常なまでの殺気と怒気を感じ取ってしまったからだ。
「殺す」と言っている…静雄が言葉にした訳ではない。
だか…目が、静雄を包んでいる空気が――全身で自分達を「殺す」と言っている。
「うぜえ…」
「はあ?」
静雄の言葉に、青年達はに反応してしまう。
「うぜえうぜえうぜえうぜえうぜえんだよ!!」
「だから何言っ――」
「俺は暴力が嫌いだってのに、俺に喧嘩売りやがってよォ…!!」
静雄から感じる殺気は、怒気は…明らかに温度を上げている。そして…青年達は完全に静雄の空気に飲まれてしまった。
「……………」
「俺に喧嘩売ってきた上に俺のこと殴ったよな?当たり所が悪けりゃ死んでるよなコレ?
つまり、お前らは俺を殺す気だったってことだよなあ?
殺す気ってことは…逆に俺に殺されても文句ねえってことだよなァ!!」
そんな理不尽な…
青年達はそう思ったが、決して口には出さない…いや、言葉を発することが出来ない。