誰 愛
□第九話
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「(あの時の、か…)」
『静雄くん、どうしたの?私の顔じっと見て…』
小首を傾げるひなたは、静雄の視線の先にも、静雄の視線の理由にも…気付かない。
「(痛ぇよな)…なあ、ひなた」
『何?』
「お前に、その…頼みたいことがあるんだけどよ…」
『頼みたいこと?私…に?』
「…ああ」
そう言って静雄は、さっきとは反対に首を傾げたひなたに向き直り…
空気を切る音がするほど、勢いよく頭を下げた。
『し、静雄くんっ!?どどど…本当にどうしたの!?』
「頼むッ!!!!」
『ぇ……?』
「俺…俺ッ!もうっ、ひなたをあんな目に合わせたくねぇ!
けどよ…俺と一緒にいたら、またひなたを危ないことに巻き込んじまうかもしれねぇんだ。
…それでも、俺は…ひなたには俺の傍にいて欲しい!
俺のくだらねぇ我がままだってことくらい…俺だって分かってる。だから!…だから今度は…いや、今度なんてねぇ!
これからは俺が…ひなたを守る!…絶対に、何がなんでも助ける!!…だから、
俺の…傍にいてくれねぇか?」
もう一度「頼む」と言う静雄。その姿は…本当に一途な、真っすぐな人なんだと伝わってくる。
だが…ひなたは静雄の言葉に、すぐに答えることができない…。
こんなに真っすぐで、優しい人を…巻き込みたくないから。
『静雄くん…私、』
「ひなたが…俺に、俺達に何か隠してるってのは…知ってる」
『っ…!!』
「…ひなたが、何を隠してるのかなんて、俺には分からねぇ。
…だから、こんなこと言うのはおかしいかもしれねぇ。けど…」
『けど…?』
「ひなたが隠してることも全部、俺に…守らせてくれねぇか?」
真剣な眼差しは…今の言葉が冗談ではないと、物語っていた。
『私…きっと、静雄くんのこと…巻き込むよ?
巻き込んで、たくさん傷つける。…それでも、いいの?』
「俺の方が先に巻き込んだじゃねぇか。…それによ、言ったろ?
…巻き込まれるのは慣れてる。ってよ」
『…うん、…ありがとう』
やっと笑顔を見せたひなたに…静雄は安心したと同時に、顔に熱が集まった。
「(嗚呼。…俺、ホントにひなたが好きなんだな…)」