誰 愛
□第十二話
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「振られてしまったのかい?」
「…岸谷、そのくらいにしておけ」
興味深そうな視線で静雄を見てくる新羅と、呆れたように新羅にくぎを差す門田が、いた。
いつも通りの2人の友人に、静雄は小さく笑った。
「別に、そんなんじゃねぇよ…ただ、ひなたが用事があるからって」
「え…?」
用事、という言葉に新羅と門田は驚いたような反応を見せた。
「神宮寺に…か?珍しいな」
「…ああ、」
「静雄―…君ね、」
「ん?」
「…岸谷?」
「何故ひなたさんに付いて行かなかったんだい!!」
突然叫んだ新羅に、静雄と門田は面食らってしまった。
目を見開いて自分をじっと凝視している2人の友人に構わず、新羅は言葉を続ける。
「確かに、ひなたさんの意志を優先したいという君の気持ちは分かるよ」
「だったら、そ「だけどね!」…」
「それでいいだろ」と、続くはずだった静雄の言葉を遮って
新羅は自分の意見を…自分の考える恋愛論を語り続ける。
「いいかい? 確かに恋愛には隠しごとも必要だ。…だけどね、大切なことまで隠してしまったら相手を信頼出来なくなってしまうよ」
「…そうなのか?」
「そうさ!…現に僕はセルティに隠しごとをされていたけど、彼女を知るためにあらゆる手段を使ってそれを突き止めたくらいだ」
「それはストーカーだろ…」
門田の冷静なツッコミは気にもとめず、新羅は更に熱を入れて喋り続けた。
「とにかく!今の静雄はひなたさんを大事にしすぎてるよ」
「大事にしたら…悪いのか?」
「もちろん、それは悪くない。…だけど、静雄はひなたさん大事にし過ぎて消極的なんだよ」
「消極的…」
「そう! 少なくとも、僕はそう思うね!!」
そう言いながら、新羅は静雄の顔を“ビシッ!”という効果音が付きそうなほど勢いよく指差した。
一瞬とはいえ、静雄が怯むほどの勢いで…だ。
「……………」
「……………」
その状態のまま、凍りついたように固まった静雄と新羅を1人眺めていた門田は…
「……はぁあ〜…」
2人の相手をするのに疲れたかのように、ただただ…深いため息を吐いた。