誰 愛
□第二話
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***保健室***
ガララー…
授業中で静かになった校舎で、ヤケに響く引き戸を開ける音と共に、
静雄はノックもせずに保健室に入った。
「すんませ……あ?」
取りあえず何か言いながら入った方がいいのかと思って言葉を発したが…
保健室を見た瞬間、静雄の思考が一瞬止まった。
(いねえ…)
始めに静雄の頭に浮かんだのは
「いるはずだと思った保険医がいない」ということだった。
一歩下がって上半身だけを廊下に出し、保健室のドアを見る。
すると、そこには「職員室に行ってます」と書かれたプレートがかけられていた。
「――チッ…」
保険医がいないんじゃ、手当ては受けられない。
未だに止まらない額の出血と、手当てが受けられないという事態に、尚更大きくなった不快感がそのまま舌打ちになった。
(ま、無人の保健室なら誰も聞いてねぇだろ)
『大、丈夫……です、か…?』
ガタガタンン!!!
「…ッつつ!!」
誰もいないと思ってたらいきなり誰かに話しかけられたので、
静雄は驚いて椅子ごとひっくり返ってしまった。
知り合い(ノミ蟲)に見られてなくてよかったと思っていると、また同じ声がした。
『――!あのっ…本当に大丈夫ですか!?』
その声は、さっきと同じ言葉をさっきより焦ったように、ボリュームを上げて言った。
身体を起こして椅子を元に戻しながら「大丈夫だ」と言うと、
声の主は安心したのか「はあ〜…」と、息を吐いた。
静雄は、さっきひっくり返った椅子にまた座る気にはなれず、
今度は3・4人掛けのゆったりしたソファーに腰を下ろした。