誰 愛

□第四話
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残りの授業も終わった放課後…


約束した通り、ひなたは静雄と新羅と一緒に帰るため、2人のクラスを訪れた。


――すると、
教室の外の廊下には生徒達が集まって、教室内を覗きながら騒いでいた。


その反対に教室内は異様なまでに静まり返り…教室の中と外はまるで…別空間の様だった。


その様子に不安を覚えながらも、ひなたは野次馬を押しのけ、自らも教室を覗いた…


静雄と新羅のクラスは…まさに壊滅状態だった。


窓ガラスは割れ、机や椅子は壊れ、あちこちに散乱していて…


壁に刺さって宙に浮いている机や、脚が手の形にひしゃげている机もあった。


よく見ると、机や椅子に混じって鉄パイプやナイフ…そして何故か、他校の制服を着た男が数人…教室の床に転がっていた。


…そんな教室内で立っているのは、額に包帯を巻いた…1人の男子生徒。


掃除用具を収納するロッカーを持ち上げ、こちらに背を向けて立っていたのは…今日出会った人物。



『(…静雄くん?)』



彼が何故こんなことをしたのか…それはひなたに分からなかった。

――だが、

今は静雄の傍にいなければならない気がして、急いで駆け寄ろうとした。


…その肩を誰が強い力で掴み、強制的にひなたの動きを止めた。


突然のことに驚きながらも、振り返ったひなたの目に映ったのは、知らない男子生徒だった。


おそらく野次馬の1人であろう彼は、真剣な面持ちでひなたを見て…小声で言った。



「おいアンタ、何する気だよ?…平和島静雄が何者か知らないのか?
アイツは人間じゃない、マジで化け物だ…“自動喧嘩人形”だとか呼ばれてるらしい…」

『自動…喧嘩人形?』

「ああ」

「何かねー、気に食わない奴がいたら、
手当たり次第に死に目に合わせる危険人物なんだって!
それで、今はケーサツにも目を付けられてるらしーよ」



ひなたの言葉に答える様に、先程の男子生徒と近くにいた女子生徒が、やっぱり小声で言ってくる。


“平和島静雄”を暴力の化身か…はたまた鬼神の様に思っているらしいその2人にとって、


ひなたを止めたのはある意味ではひなたを助けようとしたからなのだが…


今のひなたに、そんな制止は効かなかった。


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