誰 愛

□第九話
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―翌朝。



「……よぅ」

『静雄…くん?』



ひなたが学校に行こうとし、てアパートを出ると…何故か静雄が立っていた。



「…早いな、ひなた」

『おはよう、静雄くん。…何でアパートの前にいるの?』

「いや…また昨日みたいな奴らが来るかもしれないだろ?
だから、よ…その〜…なんだ、迎えに来たんだよ」



静雄は実際、ひなたの身を案じて言っているのだが、何が恥ずかしいのか、最後の方は顔を逸らして…


照れ隠しなのか、右頬を人差し指で掻きながら言った。



『でも、そこまでしてくれなくても平気だよ?』

「ダメだ」

『だけど「ダメだ!」…』

「昨日だって、そうだったじゃねぇか…。
…あの時、俺がひなたを送ってやれば…あんなことにはッ!」



昨日のこと…。


昨日、ひなたの身に起きたことを思い出した静雄は、奥歯を噛みしめて…拳を強く握った。



「…ごめん、な…ひなた…」

『静雄くん…』



本当に…本当に申し訳なさそうに言う静雄に、ひなたは…。



『…馬鹿だね、静雄くん…』



静雄に…キレられるのを覚悟して、言った。



「…あ"あ!?」



案の定、苛立った静雄を相手に…ひなたは、自分が全く怯えていないことに驚いていた。


だが、例え静雄に嫌われたとしても…ひなたは静雄に言いたかった。



「オイ…ひなたよぉ…バカって言う奴がバカだって知ってるかぁ?」

『…馬鹿なのは、静雄くんだよ』

「んだとぉッ!!!?」

『だって、昨日言ってたのに。…自分が悪いって言わないって…』

「ぁ……」

『静雄くんが、言ったのに…』

「…悪い、俺ッ…!!」

『…謝らないで』

「―――ッ!?」

『謝るくらいなら…約束してよ。自分のせいにしないって…約束して』



―お願い…。



そう言うひなたに、静雄は何も言い返せなくて…。


ただ…自分のあやまちを悔いるだけしかできなかった自分が、凄く…恥ずかしくなった。



「(情けねぇ…)」



守るどころか、逆にひなたに救われている…自分。



「(好きな奴1人、守れねぇのは…これが最後だ)」



静雄はふと、ひなたの頬に貼られた湿布が目についた。


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