誰 愛

□第十二話
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「あの、今日は用事があるから…送ってくれなくて平気だよ」



静雄が祥吾と会った日の放課後。


いつものようにひなたを送っていこうとした静雄に、ひなたは初めて「1人で帰る」と言ってきた。



「そうなのか?それなら、いやでも…」



静雄は、ひなたが1人で帰りたいならそれでもいいかと思ったが


前にひなたが1人で帰った時、自分の(正しく言えば臨也の)せいでひなたが狙われたこと。


何よりも…今朝静雄を訪ねて来た祥吾のことが気がかりだったので


静雄は、ひなたを1人きりにするのは危険だと思っていた。



「なあひなた、本当に1人で帰る気か?」

「うん」

「俺が付いていったらマズい…のか?」

「…うん、ごめんね」

「そうか…分かった」



ひなたが、一緒に帰って欲しくないと言うのなら


ひなたがそう思うなら…それには何か、自分の知らない事情があるのだろうと思い


静雄はそれ以上、ひなたに何も言わなかった。


ひなたにどんな用事があるのか気にならない、と言えば嘘になる。


実際、今までの静雄であればひなたの言ったことに納得しなかっただろう。


ひなたに、何で自分がついて行ってはいけないのかを聞き出していたはずだ。


だが今回、静雄がそうしなかったのは


おそらく…それだけひなたのことを大切に思っているからだろう。


大切に思っているからこそ、ひなたの気持ちを尊重して…静雄は引き下がった。


そのことはひなたにも充分伝わっていた。


…だからこそ



「静雄くん…ありがとう」

「…ああ」



だからこそ、2人は互いに笑顔でいられるのだろう。



「それじゃあ…また明日ね」

「おう…また、な」



お互いに笑顔のままで別れの言葉を言い、ひなたは静雄を教室に残して帰って行った。


その後ろ姿を名残惜しそうに見つめていた…静雄には気付かずに。



「ひなた…」

「愛おしくては仕方がないって顔だね」

「なっ//?!」



自分の心を読み切ったような言葉に驚き、静雄が慌てて声のした方を見ると…


そこには、見慣れた顔の知り合いが並んでいた。


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