誰 愛

□第二話
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ソファーに座り、改めて保健室を見渡すと、静雄の目があるものを捕らえた。



先程は気が付かなかったが、保健室にある一番窓際のベッドの周りだけ、白いカーテンで覆われていた。



カーテンの内側の様子は目では窺えなかった。



だが、耳をすませば僅かな物音と、微かな呼吸音が聞こえてくる。



どうやら声の主はベッドで横になっているらしい。



そんなことを思いながら、静雄はジッとカーテンを――カーテンの向こう側に意識を集中させていた。すると…



――シャッ、



と、いきなりカーテンが開いて、声の主が姿を現した。



そうなると、カーテンを見ていた静雄と自然と向かい合う形になる。



その声の主は少女だった。



黒をもっと深くしたような背中まである漆黒の髪、同じ色の大きな瞳を見開いて、静雄を凝視してきた。





「『……………』」





お互いに何も話さないで、永遠にも感じる数十秒が無言のまま過ぎていった。





(…重い)





少女が穴が空く程自分を見つめてくるので、静雄は空気の重さ…息苦しさを感じていた。






(そもそも…なんでこいつは俺を見てられるんだ?)





静雄としては不本意だが、“来神の金髪”、“平和島静雄”と言えば、学校の外にまでその常識離れした怪力や、キレた時の暴れぶりが噂されていた。



そのため、今ではその辺のチンピラやチーマーはもちろん、その手(所謂裏社会)の職業の者ですら、



静雄を避け、あまり関わり合わないようにしていた。



そんな静雄に、自分から近付いて来ようとする者は…当然だかいなかった。



現在静雄の周りにいる人達は、いずれも変人か強者なので除外するが…





『――…ですか?』

「…は?」





考えごとの途中で声をかけられたので、相手の話しを聞き逃してしまい、静雄は聞き返した。





『…おでこの怪我…大丈夫なんですか?』

「あぁ、いや…大丈夫だ。これ位の怪我ならいっつもしてるからな」





「だから気にすんな」と付け足したが、“目の前”の少女の耳には届いていなかった。



“目の前”…そう、目の前だ。



その少女が静雄との会話の最中にベッドから降り、静雄の座っているソファーの傍へ移動してきたからだ。

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