誰 愛

□第六話
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***



街の外れにある廃工場内で、携帯電話を持ったままの男はただ…固まっていた。


男の周りには、いかにもガラの悪そうなチーマー風の男達。


その人数はざっと…100人はいるだろうか。


その、誰も彼もが三流の悪役の様な顔に…恐怖と困惑の表情を浮かべていた。


彼等にそんな表情をさせたのは…彼等の中心で携帯を持っている男。


―だが、


何もその男が、彼等を脅した訳ではない。厳密に言えば、彼等を恐怖と困惑で支配したのは…


先程、彼等の中心にいる男と電話で話した相手が、最後に告げた一言。


100人はいるであろう。彼等を固まらせたその相手の、低く響いたその言葉には…


怒気、敵意、殺意…この感情を込められて、言い放たれた。



《テメエら全員ぶっ殺す!!!!》



…ゾクリ。と、携帯の受話器を通して聞こえてきた声は、彼等に寒気を感じさせる。


反論を返す隙もなく、相手の側から強制的に切られた通話に…


彼等は実感する。


自分達は…とんでもないことをしたと、実感する。



彼等のいる廃工場の奧。手足をロープで縛られて床に転がされている、意識のない…漆黒の髪の少女。


彼等は情報屋を名乗る者に言われ“ある人物”を倒すために、この少女を攫ったのだが…


そのお陰で、脅して呼び出そうとしたその人物に“殺す”宣言をされたのだ。


“来神高校の金髪”

“自動喧嘩人形”

“平和島静雄”に、喧嘩を売ったことを…彼等は後悔していた。



「び、ビビんじゃ…ビビんじゃねーぞ、オメエら!」



彼等の中心にいる男が、震える声で怒鳴った。


威厳も迫力もない。何とも情けない声を出した男に、周りにいた男達は同じく震える声で、答える。



「け、けどリーダー。こ、これから…どうするんすか?」

「ど、どうするじゃねーだろ!こっ、これから、この廃工場に来る平和島静雄を…殺りゃあいいんだよ!」



どうやらこの男は、チーマー達のリーダー格らしかった。


そして…不安にかられたチーマー達は更に、そのリーダー格の男に詰め寄る。


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