誰 愛

□第七話
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「「「「「――…ッ!!!?」」」」」



ビクリ。と、


その声を聞いただけでチーマー達は肩を跳ね上がらせ、竦んでしまう。


ある者は膝がガクガクと震え、またある者は歯が上手く噛み合わず、カチカチと鳴っていた。


―恐怖が。


恐怖が彼等…チーマー達を支配していた。


それは彼等を見えない鎖で縛り付け、チーマー達は根っこが生えた様に動けなくなっていた。


そんな彼等を見ながら…否。


そんな状態になっている自らの敵のチーマー達を睨みつけながら、


一歩。また一歩。


静雄は廃工場の内部へと入って来た。



「テメエら…」



…低く響く、
静かな声を発しながら。



「ひなたに何しやがった…」



…その顔を、
鬼の形相に変えながら。



「何でひなたが怪我してんだ…」



…怒りと殺意を、
纏う空気に放出させながら。



「もう一度だけ聞くぞ…」



ボコボコボコボコ。と、己の中で煮えたぎる感情を…


火山から噴火したマグマの如く、静雄は…全てを解放する。



「テメエら一体、ひなたに何しやがった!!!!」



その怒声が合図だった。


チーマー達は恐怖心を振り払う様に、束となって静雄に向かって来る。


相対する静雄も、チーマー達を相手に怒りに任せて大暴れしようとする。


―が、ここは廃工場の中。


ここに辿り着くまでの様に、何か重い物を投げつけようにも、廃工場はガランとしていて…


投げつける物など、どこを見渡してもなかった。


そうしているうちにもチーマー達は、武器を手に静雄に迫っている。



「チッ…」



腹立たしげに舌打ちをした静雄は、物を投げることを諦めて…


素手で、鉄パイプやナイフやらを持ったチーマー達の相手をする。



「死ねぇ!」
「くたばりやがれッ!」



などと言いながら、自分に危害を与えようとしてくるチーマー達の攻撃を避け…



「テメエが死にやがれェ!!!!」



―と、怒声を上げて。鉄パイプを振り上げて来た奴の顔面に裸拳を叩き込む。


更に、体勢を直しながらナイフで斬りつけて来た奴のミゾオチを狙い、



常人のそれよりも遥かに重い…文字通り相手が吹っ飛ぶ蹴りを入れる。


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