誰 愛
□第八話
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ひなたの身体が、静雄の腕の中からソファーへと移動したのを確認した新羅は、一旦奥の部屋へと姿を消した。
「……………」
『……………』
突如、2人きりにされた静雄とひなたは、何故か気まずくなって、黙り込んでしまった。
「(さっき…新羅が言ってたのはこういうことかよ…)…///」
『(静雄くん…何でこんなことしたんだろう…?
それに、あの廃工場でのことも…いっ、今思い出しても、なんか恥ずかしい…)…///』
お互いに頬を染めているその姿は、端から見れば何とも初なカップルの様だった。
「あ、あのよ…ひなた」
『! な、何?静雄くん』
…とは言え、このまま無言で気まずい状態でいるのも、耐え難い。
意を決した静雄は、取り敢えず何かしらの会話をしようとする。
「あー…、お前その…大丈夫なのか?…怪我とか、そう言うのはよ…」
ソファーに腰掛けているひなたの表情を窺うように、静雄は不安そうに髪の隙間からひなたの顔を覗いた。
『うん。大怪我したって訳でもないし、大丈夫だよ』
「そうか。…本当に悪かった。俺のせいでひなたに怪我させちまって…」
『…さっきも言ったけど、私が怪我したのは静雄くんのせいじゃないよ』
「そりゃあ…元はと言えば全部あのノミ蟲野郎のせいだけどよ。
…けど、俺と一緒にいたから、ノミ蟲も手ェ出したんだろうし…」
『でも、静雄くんは私を助けてくれたし、それに…あの人達に捕まったのは、私の不注意なんだから…』
「…ひなたは、悪くねぇ」
『でも――…』
「あー…それならよ、俺はもう自分が悪いって言わねぇから、ひなたも自分のせいだって言うな」
「いいな?」と静雄が言うと、ひなたは小さく頷いた。
それに満足した静雄は、ニッと口角を上げてひなたの頭をわしゃわしゃと撫でた。
遠慮がなくなったのか、髪型を乱す程の強さで行われた行為に、
ひなたはまた、顔に熱が集まるのを感じた。
おそらく頬が染まっただろう顔を静雄に見られないように、俯いたひなたには見えなかったが、
ひなたの頭を撫でていた静雄も、耳まで赤くなっていた。
「ごめん、お待たせ―…って…あれ?」
「あ"ッ…!//」
『〜〜〜ッ///』
ひなたの手当てをする準備が済んだのか、新羅がリビングに戻って来た。