誰 愛

□第九話
2ページ/9ページ




「(あの時の、か…)」

『静雄くん、どうしたの?私の顔じっと見て…』


小首を傾げるひなたは、静雄の視線の先にも、静雄の視線の理由にも…気付かない。



「(痛ぇよな)…なあ、ひなた」

『何?』

「お前に、その…頼みたいことがあるんだけどよ…」

『頼みたいこと?私…に?』

「…ああ」



そう言って静雄は、さっきとは反対に首を傾げたひなたに向き直り…


空気を切る音がするほど、勢いよく頭を下げた。



『し、静雄くんっ!?どどど…本当にどうしたの!?』

「頼むッ!!!!」

『ぇ……?』

「俺…俺ッ!もうっ、ひなたをあんな目に合わせたくねぇ!
けどよ…俺と一緒にいたら、またひなたを危ないことに巻き込んじまうかもしれねぇんだ。
…それでも、俺は…ひなたには俺の傍にいて欲しい!
俺のくだらねぇ我がままだってことくらい…俺だって分かってる。だから!…だから今度は…いや、今度なんてねぇ!
これからは俺が…ひなたを守る!…絶対に、何がなんでも助ける!!…だから、
俺の…傍にいてくれねぇか?」



もう一度「頼む」と言う静雄。その姿は…本当に一途な、真っすぐな人なんだと伝わってくる。


だが…ひなたは静雄の言葉に、すぐに答えることができない…。


こんなに真っすぐで、優しい人を…巻き込みたくないから。



『静雄くん…私、』

「ひなたが…俺に、俺達に何か隠してるってのは…知ってる」

『っ…!!』

「…ひなたが、何を隠してるのかなんて、俺には分からねぇ。
…だから、こんなこと言うのはおかしいかもしれねぇ。けど…」

『けど…?』

「ひなたが隠してることも全部、俺に…守らせてくれねぇか?」



真剣な眼差しは…今の言葉が冗談ではないと、物語っていた。



『私…きっと、静雄くんのこと…巻き込むよ?
巻き込んで、たくさん傷つける。…それでも、いいの?』

「俺の方が先に巻き込んだじゃねぇか。…それによ、言ったろ?
…巻き込まれるのは慣れてる。ってよ」

『…うん、…ありがとう』



やっと笑顔を見せたひなたに…静雄は安心したと同時に、顔に熱が集まった。



「(嗚呼。…俺、ホントにひなたが好きなんだな…)」


次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ