青の祓魔師

□僕っ子お嫌いですか?
1ページ/3ページ

とある部屋に、携帯の着信音が鳴り響く。

「はいはーい(低め&怠そうに)、桐です…あぁ、シュラ先生。はい?はいはい、じゃあ玄武連れて来ます。…朱雀と青龍と白虎は寝てますけど………解りました!もぅ連れてけばいいんでしょう!?行きますよ!15分程待って下さい、すぐに向かいます。はい、了解です」

主は携帯をコートに突っ込み、主の周りですやすやと寝ている男3人をたたき起こした。

「仕事」

それだけ言うと、男達はキリリと畏まり、武器を携えた。

「玄(くろ)」

玄と呼ばれた男は、胸元に抱え込んでいたライフルとジグを主に手渡した。

「玄は寝なくてよかった?」
「はい」

主の背後で欠伸をしている彼らを横目で見遣りながら聞くと、即答で答が返ってきた。
それを噛み締め、魔法の鍵を手にする。

「遠姉、出かけて来る」
『行ってらっしゃい♪』

パソコンの画面の中には6歳違いの姉がリアルタイムで映し出されている。テレビ電話みたいな機能となっている。

『桐、ちゃんとご飯食べるんだよ?』
「食べた。行ってきます」
『全くもう…無茶しない様にね?』
「しないから。」

鍵を捻り、祓魔塾へ入る。

「果して、これは仕事なのか…?」

ひっそりと、桐は呟いた。


「桐!」

声が呼んだ方を見た。

「シュラ先生……人使い荒過ぎっすよ……;」
「よしよし、全員連れて来たな」
「呼んだからにはちゃんと奢ってくれるんですよね」
「勿論だにゃ〜。ほい」

手渡されたのはとあるメーカーのもずくスープ。

「うん、これこれ。」

感心している桐を放置し、シュラは燐達を呼び入れた。

「桐、こいつらはあたしの生徒なんだが、まぁなんだ、関わる事になるからお前の恋人の事含め簡易的に自己紹介してちょ」
「そんな投げやりな…」

『主〜』
「…なに」
『寝ていい?』「駄目だ」

朱い髪の男に駄目だしを出した人物は正面を向き、改めて口を開いた。

「え−……、柚苑桐15歳、上一級祓魔師。称号はテイマーとアリア、ナイト、ドラグーンです。奥村燐くんには大いに関係するんで言っときます。「地の王」アマイモンは自分の恋人です。攻撃してもし傷とか作ったら30倍で返すんで覚悟して下さい。シュラ先生とは兄弟弟子っていうか、姉妹弟子です。そんだけです。あと、一応女です。それと四神と契約してます。アリアは一文字系列一文字系です。なんで明陀の朱雀とうちの子は別物です。それから志摩廉造くん。うちの遠姉と柔造さんが結婚したらめでたく兄弟ですよね。馬鹿な事しないでね。まぁこれからここにいる皆と行動するようになるんでいっちょよろしく!……こんなんでいいか」

桐はやれやれと溜息を着いた。

「飴食べたいんで呼んでいいっすか」
「勝手にしろ。周りに迷惑かけんなよ」
「あーくん、飴1個」

窓を開け、上を見上げ、呼びかける。

「ありますよ」
「オレンジがいいな」
「勿論、桐の為にあと1個残してあります」
「やった♪サンキュ」

逆さまに顔を出した人物…アマイモンに一同は一瞬ビビった。
出雲が札をアマイモンに向けた瞬間、桐の視線が出雲に突き刺さった。

『攻撃したら殺す』

そんな無言の圧力が出雲にのしかかった。その目に押され、思わず札を持つ手を引っ込めた。すると今の一瞬が嘘だったかのように、桐は笑顔をアマイモンに向けた。

「(人事じゃないわ…!!!!)」

出雲は内心そう感じていた。そんな出雲の心を見透かした様に、桐は言った。

「柚苑家1の問題児ですからね−。遠姉みたいに綺麗にはいきませんて」

人差し指をこちらに向け、挑発してくる。
出雲が攻撃に出ようとした瞬間、扉が開いた。

「桐!!((汗」

シュラと桐が溜息をついた。

「「なに/なんだ、遠姉/遠」」
「玄武の弓忘れてるってば!!」
「……あのね、遠姉」

弓を突き出す姉の手に弓を突き返しながら桐は続けた。

「……四神は本体がいればその武器は必要ないの。だから玄の玄弓(げんきゅう)も、朱雀の八扇(やつおうぎ)も、青龍の眠笛(みんしょう)も、白虎の風牙(ふうが)も全部置いてきたでしょ?遠姉、自分の力で持てる玄弓しか持ってこなかっただけだろうし……風牙とか、1つで5kgあるからね」
「ふ……だってぇ〜」

半泣きの姉を、仕方なさげに慰める。

「しかも遠姉、京都から来たでしょ?一回うちに寄って。」
「……ぅぐ」
「それに今日柔造さんとデートじゃなかったっけ。」
「ぎく」
「そのために早く出掛ける、って張り切ってたよね」
「ぎくぎく」
「…待ち合わせまであと2分か。ドアがあるとこなんてそうそうないよ?しかも歩くんでしょ?今日は白虎貸さないからね?」
「うわぁぁぁんどうしよう〜!!!!!!桐ぃぃぃぃ!!!!!!(泣)」

乙女全開。

「えっと…?」

燐、しえみなど京都組以外が状況を飲み込めていないのを理解すると、簡易的説明をした。

「あぁ、これはうちの姉。上一級祓魔師で、柔造さんと付き合ってるって言った人。」
「うわぁぁぁん柔造にフラれる−!!!!!!!」

桐は頭を抱えた。携帯を取り出し、電話を掛けはじめた。

「ちは、桐です。今から姉を速達するんでどっかの扉の前で待っててください。…はい、お手数かけます。……じゃあよろしくお願いします」

携帯をコートに仕舞い、志摩に荷物を全て持たせる。

「塩酸入ってるから気をつけて」
「え…あ、はい…」

そして荷物から出した巻物に自分の血で扉を一つ描いた。

「『解』」

ボソリと呟くと、巻物から扉がスルリと抜け出て、桐の前に立ちはだかった。

「さ、遠姉、行く。」
「ごめんねぇ、ごめん!ホントに!帰りにGODIVAのチョコ買って来るから!『開』!」

先程とは異なる字を唱え、扉の先へ姿を消した。

それを完全に見届けると、桐は荷物を受け取り、シュラに向き直った。

「……本題入りますか。」

燐達はあまりのあっさりぷりに口が思わず全開になった。

「まぁこいつはこんなんだから気にするな」
「…で…でもよ…」

燐はおどおどしている、珍しく。

「実践やるっていうんで補填中を起こして来たんですよ?やらないんだったら全力で玄を寝かせる為に帰ります」
「いやいやいやいや、待て。遠が来て頼むのを忘れるところだったが……お前、燐に剣を教えてやれ。あと、勝呂達京都組には詠唱系の普通のだな。それに加えて神木と荘山には召喚系を。それと久しくやってないからあたしと手合わせ軽く☆」
「…最後の、自己中すぎますよ」

そういいながら剣とライフル&ジグ、血液の入った小瓶に大量の巻物や掛け軸を取り出した。

「じゃあまずあまり手がかからない詠唱系から。一人一人個人差があるから個別練習のリスト作る。でそれが出来る様になったら呼んで。テストすんね。」

腕を出すように言われた3人は腕を素直に出した。
そこへ「『縛』」と禁呪をかけられ、本調子で術が使えなくなってしまった。
どうやら、ハンデの状態で練習しろ、というらしい。

「…やったろうやないの」
「「さすが坊!」」

3人は練習に没頭し始めた。

「次に、召喚系。自分の血の精度で高度の魔物や悪魔が呼べるのでそれをやる。扱い易いんで今回はアマイモンの眷属を召喚したいと思ってます」

うちは詠唱系と連動してるからな−、と言いながら巨大な円を床に血文字で書く。

「『陣』」

すると円の中に血がひとりでに複雑な図形を組みはじめた。
そのうちに陣が完成した。

「ちなみにこれはうちの四神の一人の朱雀を喚び出すのに使う魔法陣。呼び出したい悪魔を連想して、円を書く。その時血の精度がよければ思い通りの悪魔が召喚できる。失敗すればそれに近いレベルの悪魔が召喚できる。まぁ血を連想したものに辿りつけさせる為に使う精神力の浪費酷いから一回一回休む事。じゃあ一度召喚できたら5体連続で呼び出して貰うからコツをよく掴んでおくこと。じゃ次」

ものすごく淡々と説明をしては次に繋げてゆく。

床に直接書いちゃったよ、と血をコントロールし元の小瓶へ戻す様は、まるで手品師の様であった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ