青の祓魔師

□ちょっと、そこのお嬢さん。
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「そこのお嬢さん」

後ろから声がかけられる。
誰だよ。あたしはダッシュで逃げるように走る。

「あ、ちょっと逃げんでって!」
「しつこい。大体何、それナンパのつもり?」
「…あ、違うねんて。」
「は?んなわけない」

眉根をキッと寄せる。相手は黒髪の短髪を片手でわしゃわしゃして困ったような顔をした。

「…そないにガード固くなってしもたんやなぁ」

はぁ、と相手は溜息をつく。何だこの人。あたしの事知ってるっぽい。

「つかあんた誰。名前くらい名乗れ」
「ん?あぁ、」

相手は名前を言った。
その名前に反応した。
だって、昔に「会いに行くから」と約束した人だったから。

「…覚えとらんの?志摩。志摩柔造や」
「うへぇ…ほんっとに柔造くん?」
「気持ち悪いもの見る目で見るんやめてくれん…?」

改めて、まじまじと彼を見る。
昔の頼りない影はどこにもなく、優しげな顔つきにさりげなくついている筋肉。

「なんや別の人みたいやなぁ…」
「お。標準語しゃべっとると思うたけど京言葉もちゃんとしゃべれるんや」
「当たり前やろうが」

東京で住むことになってから、周りに早く馴染もうとして方言をなんとか隠し続けたのだったが、やはり本心を口に出したときは元に戻ってしまうのが少し悩みの種だった。

「今日は俺に会いに来てくれたんやって?女将さんから聞いたで」
「へぇ。このストーカー」
「はっ!?失礼な奴やな!!探しに来てやったんに」
「それってあたしが昔と全然変わらんゆうことを前提に話進めとるように聞こえるんけど、そこはどうなん」

問い詰めると、うぅ、と声を漏らし白状した。

「そこは聞いたらあかんて。まぁあれや、女将さんとこに届いてた写真をチラ見してなんとなくで探してたんやって」
「へぇ。ふーん。ほぉ」
「せやからすまんって……!!!!!」

ひたすら平身低頭している彼の姿がすごくツボにはまったので許してやった。

「まぁ、かっこよくなったんちゃいます?」
「す…」
「す?」
「素直に褒めよった…!?」
「あ?」
「や、あ、何があったん!?あ、好きな奴でも出来たん?そやな、もうお前も18やしな、うん「おい話聞け」…はい」

顔を真っ赤にして慌てふためいている。
なんなんですかこの人は。

「好きな人なんて昔からおるよ」
「ぃ!?」
「誰のためにこんなあっつい場所まで訪ねて来てやってると思ってるねん」
「……」

え、真剣に考えてるよ。
今までの流れ考えてよ。
昔と今も変わらないのここかよ。

「気付けこれくらい。柔造くんですよ」
「あぁ…え?」

間抜けた顔をするんじゃない。
あなた今18でしょうが。
どっかの喧嘩に負けたガキんちょみたいな顔になってますよ。

「え、俺…なん?」
「それ以外に何が。ていうか誰が」
「お…おん。俺も、お前を好いとるけど」
「うん。………え、今なんつった?」

空耳ですかそこのあなた。

「や、何回も言わせるんか。好いとる、っていっとるんやって」

はいここで最高級の笑顔ー…。
殺人級っすね。マジで。

「結婚せぇへん?」

にこやかにそう、口にした。

「いや、それは後でな」
「なんでなん!?」

ガーン、と顔に書いてある。
おもしろ。

「後で」

なでなでしてやる。

「後であたしの両親に会いにいこう」
「!!それって、」
「だから後でね」

あたしは馬鹿だ。
これなら、彼ならいくら誘われても構わない。



あぁ、来てよかった。














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