DRRR

□黒髪の彼女は恋をする
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「な、なんかごめんね、正臣……。」
「い、いや………」

スゴく気まずい雰囲気である。家に帰って、お互いに何も話さないのもおかしいと思ってとりあえず、謝ったが、余計に気まずい雰囲気になった。

「あ、姉貴、何してたんだ?」
「うーんと…………バイト?」
「何故疑問形!?」
「メイド喫茶でバイトを………」
「メイド喫茶!!!???」
「あははは………」

メイド喫茶でバイトをしているのは嘘じゃない。けど、正臣にヒットマンをやってるとは言えなかった。

「てか、なんで平和島静雄とかと…………」
「えっ、それはね?しつこいお客さんに追いかけられちゃってて、助けてもらった、みたいな?」
「…………………」
「………」

嫌な静寂。

それを私の携帯が打ち破った。


知らない番号。でも、なんとなくわかった。

「ごめん、正臣。電話だから少し外れる。てか、出掛ける。」
「え?あ………」


私は何か言おうとした正臣をスルーして、まず、元私の部屋に入り、鍵を閉めた。


「はい、もしもし」
『あ、やっと出た。』
「出ることはわかってるでしょう?臨也さん。」
『まあね。』
「で、何で電話を?」
『君が俺に言いたいことあるんじゃないかなー、って』
「まさか。そんなこと、ないですよ?情報屋の勘、鈍ってるんじゃないんですか?」
『君は俺に言いたいことあるはずだ。』
「……………。」

ダメだ。この人は何でもお見通しのようだ。

「あります。でも、どうして臨也さんから電話を?」
『俺からわざわざ電話してあげたんだよ?君が困らないように。』
「………じゃぁ、率直に言いますね。私には貴方の力が必要です。弟子にしてください。」
『あはは、俺は弟子なんて取る柄じゃないなぁ。確かに、君と俺がタッグを組めば最強かも。君にも俺にも利益がある。だけどね……』

臨也が言葉を止めた。

「だけど?」
『俺は人間が好きなんだ!あくまでも、君個人という人間じゃなくて、君を含めた全ての人間を愛しまくってる。だから君と組むのも面白いけどつまらない。直に退屈になる。それに俺は面倒なことが嫌いでね。タッグを組んだら、君を匿わなきゃならないからね。その間の楽しみを提供してくれるなら構わないよ』

息を一度に出し切る勢いで一気に話した彼は再度あたしに言った。

『俺は人間を愛してる!!だからさ、人間も俺のことを愛するべきだよね?』

同意を求められるも、呆然とそこから動けなかった。

この人は、
案外食えない男だ。

だからこそ、組みたい相手でもある。

「今は諦めますが、また、いつか…絶対に貴方の方からあたしと組みたいと言わせてみせます」

あたしは断言した。

憧れ、敬意、恋慕…

全ての思いを前提に、情報屋に言い放った。


彼に一瞬驚愕の気配が窺えたが、次の瞬間には爆笑し始めた。

「な、なんですか!?」
『いや、君という人間は俺が思っていたよりもずっと面白そうだなぁ、と。じゃあね、優美サン』


彼は何事もなかった様に電話を切った。

あたしの手には、多量の汗が滲んでいた。
数日後。
優美は池袋を歩いていた。
その時、優美にとっては不愉快極まりない女子の嫌な声が聞こえた。
(いじめ、ねぇ)
優美は声のする方に歩く。そして、眼鏡をかけた大人しそうな女の子に三人の子が絡んでいた。
ああ、イライラする。


「ちょっと、やめたら?」


声をかけたら、三人、不細工な顔をこちらに向けた。

ヤバい、計画なしで声をかけてしまった。

内心で舌打ちをする。

そんな時。その背後に何か黒い影が蠢いた。

(えッ?)

優美は息を呑んだ。

(目が、赤い?)

状況が読めない。とりあえず、優美はポケットに入っているナイフを掴む。

「「「なんとか言……」」」

優美は急に切りつけられた女を見てるしかなかった。

(なんなの、一体!!?)

1人切りつけた後、腰を抜かさず、ただ睨む私をターゲットにしたのか、男は私の方にやって来る。刺そうとする刃物を避け、また来る攻撃をナイフで受け止める。すると、男は諦めたのか、風のように消え去った。

(切り裂き魔?)

優美はナイフを何もなかったかのようにしまう。
「あの、」


優美は大人しそうな女の子に声をかけられて、自分のしたことに気付く。

「あなたは……」
「あっ、わ、私?サイレントキラーとでも言っとこうかな?じゃねっ。」

優美は走って逃げた。

同日 チャットルーム

甘楽《聞きましたー?今夜、とうとう来良学園の生徒が切り裂き魔にやられたって!》
田中太郎【え?マジですか?】
セットン[物騒ですねぇ]
アリス〈物騒にも程がありますよ。〉
蒼鷹〔本当ですか?〕
甘楽《マジマジの大マジンですよー!一年生の女子生徒だって!》
田中太郎【すいません。ちょっと電話するんでROMります】
内緒モード 甘楽《安心しなよ。君の彼女じゃないらしい。》
内緒モード 田中太郎【あ……どうも。でも、一応心配なんで】
セットン[んー、どの辺か解りますか?]
アリス〈セットンさん、そんなことを何で聞くんですか……。〉
甘楽《えっと、南池袋の、都電の雑司ヶ谷駅から少し離れたとこですけど》
甘楽《あの辺りにいけば、まだパトカーとか集まってるからすぐわかると思いますよ》
セットン[そうですか………。あ、すいません。ちょっと落ちますね]
甘楽《やっだー!セットンさん、野次馬ですかー?》
蒼鷹〔情報提供した側もどうかと思いますよ?〕
アリス〈でも、野次馬ですか?気を付けてくださいよ?〉
セットン[いや、そんなんじゃないですよ]
セットン[とりあえず、またー]

――セットンさんが退出されました。

甘楽《あー。もう!》
蒼鷹〔あ、あたしも相方がうるさいので。〕
アリス〈相方?あ。私も仕事なんで。落ちますね。〉


――蒼鷹さんが退出されました。
――アリスさんが退出されました。

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