main(銀魂)
□背中(土沖)
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爽やかな風、そよぐ木々、ぽかぽかと暖かい陽気。
こんな天気なら眠くなるのが人間というものだろう。
それは一番隊隊長、沖田総悟も例外ではなく…
「総悟ォォォォォォォ!!」
安眠を妨げる怒鳴り声
だが、彼は特段気分を害した様子も無く、アイマスクを下げて、平然と答える。
「何ですかィ?人の安眠を妨げやがって。土方コノヤロー」
「また仕事サボりやがって!お前はいつになったらちゃんと仕事すんだっ!!」
瞳孔を開き、青筋を浮かべて怒る様はまるで鬼の形相。
それでもまだ総悟は平然とした顔。
「まぁ、そんな言わねェで下せェ。こんなに暖かけりゃ働く気も失せるのが人間ってもんでさァ」
「いや、お前は常日頃から働く気なんざさらさら無ぇだろうが!」
「ったく、見てみなせェ。ザキなんてミントンしてやすぜ、ミントン」
そう言って山崎の方を指差せば、そっちの方へ怒鳴りに行く土方さん。
もう一眠りしようかと思ったが、ザキが土方さんに怒られているのを見るのも面白いと思い、起きている事にした。
ザキィィィィィィと叫ぶ土方さんと、言わないで下さいよ、沖田さん!等と言いながら逃げる山崎。
面白くてついついククッと笑いをこぼす。
気付くと、いつの間にか鬼ごっこは終わり、土方さんは山崎に説教をしていた。
山崎は土方さんに隠れて見えず、見えるのは土方さんの後ろ姿ばかり。
その時、思った。
『嗚呼、あの背中だ』
ずっと、忌々しいのに、憎いのに、気になる、振り向かせたい。
事あるごとにちょっかいをかけ、その度に振り向いてくれる。
そして俺は満足するんだ。
でも、どうしても届かなくて。
振り向いてはくれるけど、触れはしなくて。
彼奴と肩を並べたい。
せめて、触れられる位置まで行きたい。
何年間そう思い続けている事か。
(でも…絶対追いついて見せまさァ)
そんな誓いを新たに、彼はまた陽気に身を任せ、目を閉じるのであった。
―彼奴の背中が、俺の目標