main(薄桜鬼)

□One good turn deserves another.(土沖)
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恵まれた奴を見ると、虫酸が走る。それは妬み等というただ劣等感だけの簡単な感情ではなくて、恵まれてない奴を犬以下とでもいうように見る、もっと悪いのは気付こうともしない、そんな奴等に人間としての倫理観から、嫌悪感が沸き上がるのだ。
なんて偉そうな事を言ってみても僕は負け犬に相違ない。ボロボロの衣服やだだ長く伸びたばさばさの髪が目に入り、思わず乾いた笑いが零れた。

そう、僕はホームレスとか、浮浪者とか、そういった類いの人間だ。その上、ホームレス仲間とつるんで今の状況に甘んじることも許せず、しかし体が弱いためにあまり長い距離を歩けなかったり、熱を出して動けなくなってしまったり、そうすると少しの食べ物を買うだけのはした金も手に入らずに衰弱するという負のスパイラルに陥っている。それでも何とか死んでいないのは本当に悪運が強いと言うか何と言うか。
それでも、そう遠くない未来には死んでしまうだろう。この世界で生き残ることはそんなに容易では無いのだ。

目が覚める度に呟く言葉がある。
「何でまだ死んでないんだろう。」
恵まれた奴等が言うように僕が犬以下の存在なら、価値の無い存在なのなら、いっそ生まれなければ良かったのに。
そんなことを思いながら、熱っぽい体を休めるべく、体を丸めて目を閉じた。
今下ろした目蓋が再び開くことが無いように祈りながら。



…ああ、今日はやけに冷えるな。
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