花束をきみに
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コツ…コツ…
伏見、という人はとても気怠けな感じで現れた。
「伏見猿比古。…よろしく」
「ぁ…、如月実桜です」
黒縁眼鏡に、軽くはねた髪…
この気怠い雰囲気…
どっかで見たことあるような…
記憶の断片がチラついているけど姿を見せてくれない。
「伏見さん。ここまで運んでくださったようで…ありがとうございます」
とりあえずお礼を言うと、伏見さんは怪訝そうな顔をした。
「お前を気絶させたのは俺だけど」
「でも運んでくださったので…」
「……変なやつ」
それを言うと、伏見さんは扉に背をもたれてタンマツを弄りだした。興味は薄れたようだ。まぁ、宗像室長みたいに笑顔で隠されるよりは好感持てるけど。
「−−−伏見さんて何歳なんですか?」
吸いよられるようにそんな質問をしていた。
「……………18」
視線はいっさいこちらに向けず、たんたんと述べた。
「えっ…同い年なんですね…意外でした」
「あ、そう」
愛想よくするつもりないよね、この人。
18歳かぁ…あいつもなのに、どうしてここまで違うんだろ。
−−−っ!
お、もいだした。
写真にいたんだ、多々良が撮った写真に。たしか、美咲と一緒に入ったけど…私が吠舞羅にいく前に 裏切ったって聞いたことがある。
私は視線を向けた。
前、吠舞羅で過ごしていた人。
あの人達の仲間だった人。
それを…裏切った人。
かまをかけてみようか。
「伏見さん…美咲、知ってますよね」
「っ!おまえっ……」
あきらかに動揺し、視線を向けてきた。 驚いていた表情は、だんだんと口角が上がっている。
その表情は………
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