笑顔を失った天使 ィナイレ
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「あーあ、負けるとかありえねーし」
りおなが不満そうにつぶやく
そんなりおなのことがかわいく見えてしまう俺はきっとバカなんだろう
俺はりおなが好きだ
かなり前から
「なあ、不動」
「?」
「マカロンおごれ」
「はいはい」
りおなは俺の少し前を歩いていた
踏切が下がりファンファンと音がして電車がやってくるのを告げる
灰色の電車が俺たちの前を通り過ぎていく
鉄板のように熱いアスファルトの上でさらに暑い太陽光を浴びながら何も言わず電車が通り過ぎるのをまつ
電車が通り過ぎると踏切が上がり俺たちの前に道を与えた
りおなは迷いなくいつもの店へ向かう
『マカロンハウス』
その看板をちらっと見て店へ入る
「いらっしゃいませ」と店員の声がして甘いにおいが俺の鼻をつく
りおなは迷わず何種類ものマカロンが並ぶショウウィンドウの前へ進むとどれにしようかと頭を抱えた
「あら、いつもありがとうね」
店長の三十代くらいのババァがりおなに声をかける
普通の女子中学生ならここで「おいしいですから」とかなんとか気のきいたことを言うのだろうがりおなはちがう
「払ってるのはあっちのモヒカンなんで、もっと買えって言いたいならあっちに言ってください」
そっけない返事に店長は俺のほうを見てニコッと微笑んだ
りおなは立ち上がると「チョコ2つ」とつぶやいた
店長は「ありがとうね」とつぶやきチョコレート色のマカロンを二つ袋に入れた
「おい、財布」
「はいはい…」