もう一つの戦い ィナイレ&イナゴ

□第四章
1ページ/3ページ

暗い道を歩く

うちへと続く道を

「ただいま」

玄関のドアを開ける

いつもは整理整頓された廊下には今朝放り出してきた靴下やらが転がっている

夕食の匂いがしない室内玄関にリビングのドアを背にするように座り靴をぬぐ

食欲がない

「おかえり」という空の声はない

いつもみたいに笑顔で迎えてくれる空はいない

幸せの空間だったはずなのに

ここだけは特別な空間だったのに

その空間に不可欠な空はいない

空がいなければここは外と変わらない

空は…
俺が確実に指名を達成するための

人質だ

今ごろどうしているだろう

俺のせいで空は由理奈のように檻に入れられているだろう

ちゃんと食事はもらえているのだろうか

できるもんならこんな任務やりたくない

誘拐犯の役なんて…

鬼道君や理緒奈、剣城に南雲

俺は追われる立場だ

捕まるわけにはいかない俺がしくじれば空は…

もぅ悪役はごめんなんだよ…

なのに、なのになんで

俺はヒーローになれないんだ?

俺が守っていったくせに俺のせいで空は…
なんでだよ…

なんで俺は空一人守れねーんだよ

くせったれっ

リビングに入り電気もつけずにソファーに倒れ込む

「なさけね〜」

つぶやくと同時に額に腕首をのせ目を閉じる

(空…必ず必ず助けるからな)

ポケットの中にあるケータイが振動をはじめ音楽が流れる

「だれだよ」

画面には今一番恨んでいる奴の番号が表示されている

そう空を誘拐した犯人だ心臓の鼓動が激しくなる

ふるえる指でボタンを押しケータイを耳もとへと運ぶ

「…もしもし」

『不動君…君にはがっかりしたよ
…剣城京介を逃がしたそうじゃないか』

俺は勢いあまって立ち上がる

「…は、はい…」

『これはミスかね?』

「…い、いえ…これは…」

『これは?なんだね?』

「…」

『は〜……本当に残念だよ…こんなに若くて美しい女性の首を切らなければならないのだから…』

「!!!!!!まっ、待ってください」

『仕方ないだろう、ミスを犯したのは君だ』

「もう一度だけ…もう一度だけチャンスを」

『…次にミスをすれば…どうなるかわかってるんだろうね』

「はい…」

『じゃあがんばってくれたまえ』

プープープー

「…」

次ミスれば…空は…

空…わりぃ…俺のせいで関係ないお前まで巻き込んで…

ほんと…ごめんな

俺は…本当にさいてーな奴だな…

俺はそのまままたソファーにたおれこんで眠りについた
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ