short~

□こうなるはずじゃなかった思い
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「馴れ合いは今日かぎりだ…遊びは終わりにする。今後お前と俺はただのツー・マンセルだ。」

「わかった。」


離れた背中に向かって、顔色ひとつ変えずにそう返す。
別れを言われたのは、アジトから少し離れたそこ。いつもより遠い距離に、なんとなく違和感を感じたのは、長く共にいすぎたせい。

始まりは単純だった。

満月の落ち着かない夜に、ただ互いに人肌を求めたから。
気持なんてものはとうに忘れた犯罪者。この世界で愛なんてものは存在しない。少なくとも、この時の二人には必要ないもので、月光の下で絡み合う視線は共に冷めたものだった。

一夜の関係のはずだった。
けれど、すれ違いざまに振り返れば互いに目があって、引き合ってしまう。
言葉を交わすことはほとんどなかった。聞こえるのはサソリの熱い吐息と、自分の呼吸音。体は狂ってしまいそうなほど熱を帯びているのに、闇中で交じり合う視線はやはり冷めたもの。

似てると思った、その目。

どこか別のところを見ている見たいなその目が、自分のそれと同じに思えて、今思えばそんなところに惹かれてたのかもしれない。

…―だけど、その瞳に酔わされて、気付いたときには長引きすぎていた。

特別な感情など持つはずは無かった、甘い気持はとうに捨てた、思いの末路は悲惨なものだと知っている。

そう、
犯罪者なのだから。


…ただ、

別れのその前になって、初めて交わした口づけに、感じとった危険…


だからこうして、言葉で思いに釘をうって、互いの心をもとに戻す。
何もなかったころに時間をもどして、危険な思いを塗り潰しましょう。




こうなるはずじゃなかった思い



(お互い誤算だった。本気で相手を思っちまうなんて…)


fin~


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