流水落花


□その一
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水道は目と鼻の先にある。しかし、水道を使っているときは、自然とベンチに背を向けることになる。


ちょうどその時だった。

「ねえ、君ひとり?」

「僕らと遊ばない?」

「あ、それあそこのクレープでしょ、一口ちょーだいよ!」


リユキは、高校生かそれよりも年上の男3人組みに囲まれてしまった。

「あの、連れが・・・」

連れがいますと言いかけた時、3人組みの後ろに猩影が戻ってきた。


「あ、」

リユキの呟きと視線に、男たちは振り返る。


「う、うわでけー」

「おいてめぇら、何してやがる」

猩影が低い声で3人を睨みながら言う。

「ひ、ひえー」

「男連れかよ」

猩影に圧倒された3人はびくびくしながら走り去っていった。



「大丈夫ですか?」

「大丈夫よ、何もされてないし。それより敬語」

リユキはまたむっと口を膨らませた。

「・・・よかった。悪かったよ、ひとりにして」

「心配しすぎよ。はい、ハンカチ」

「さんきゅ」


そのあと二人はクレープを食べ終えて帰路についた。




「おお、リユキ帰ったか」

「ただいま、おじいちゃん!」

部屋に向かう途中の縁側で祖父であり妖怪の総大将でもある、ぬらりひょんがお茶をすすっていた。


「今日は少し遅いんじゃないか」

「駅前にクレープ屋さんができたの。だから帰りに寄っちゃった」

「なんじゃと!それはぜひわしも食べてみたいのう」

「とってもおいしかったよ」




「・・・のぅ、リユキ」

「何?おじいちゃん」

「お前さん、ワシのあとを継ぐか?」

「何いってるの。それはリクオでしょ」

「ははは、そうじゃったな」
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