流水落花
□その二
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「リユキ様、おはようございます!リユキ様もご覧になりましたよね!」
「おはよう。何が?てか、何このご馳走」
「あ、リユキ姉おはよう。カラス天狗どうにかしてよ」
「昨夜のリクオ様は実に勇ましゅうございました、このカラス天狗、感動いたしました!そうですよね、リユキ様?」
「ああ、それでこの宴会なのね」
「えー姉ちゃんまで。ボクは何も覚えてないんだよ」
「再び、三代目を継がれることを宣言されて。リユキ様もお聞きになりましたよね」
三度、詰め寄ってくるカラス天狗にリユキは困った。この様子だと、リクオは本当に覚えていないのだろうし、なんだか可哀相だ。
「あはは、どうだったかなー?」
曖昧に笑って、リユキはトンとリクオの肩を押す。
「リクオ、学校行こう。遅刻しちゃうよ」
「姉ちゃん、うん」
「「行ってきまーす」」
屋敷の門を出ると、猩影がすでに待っていた。
「ごめん猩くん、おはよう」
「おはよう、猩影くん」
「おはようございます、リユキ様、若。何だかにぎやかですね」
「あはは、もう近所迷惑だから止めろって言ってるのに」
「まあ、気持ちはわからなくもないけどね」
リユキは猩影にアイコンタクトをする。「あとで話すわ」と。それに猩影も頷く。
「あ、ボク、猩影くんに何か言いたいことがあった気がするんだけど・・・忘れちゃった」
それがリユキには心当たりがあったが自分から言えるわけもなく。
中学校と高校の通学路の分かれ道で、リクオを見送る。その後ろを雪女と青田坊が距離を開けてついていくのをいつものように見守ってから、リユキは猩影に昨夜の出来事を話した。
「・・・そんなことが。鴆の兄貴は無事で?」
「うん、屋敷はしばらく住めそうにないけどね」
「そうか・・・って、リユキもそこに居たのかよ」
「え、うん。居たよ、だからわかるんじゃない」
リユキが話したのは、鴆の屋敷が火事になったこと、それは下僕の裏切りであること、そしてリクオが再び覚醒したが、本人は覚えていないということ。それが今朝の宴会に至っているということだ。
「今回は仕方がないけど、できるだけ危ないことに首突っ込まないでくれよ」
はぁと溜息とともに猩影はリユキの頭を撫でる。
「うん。気を付けるね、ありがとー猩くん」
鴆編終了。