流水落花


□その四
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広間では会議が行われていた。議題はもっぱら、昨夜の旧鼠の件だ。




「おそらく旧鼠は誰かに飼われていたんでしょうな」

「それはリクオがまた妖怪になったというのに、それを”よし”と思っとらん奴なんじゃろーのぅ」

「そりゃーそうでしょ。いくら覚醒しても昼間は人間。しかも覚醒時の記憶がないとなれば・・・」

鴆はそこで先ほどリユキに言われたことを思い出す。



「(待つとは言っても、他の幹部連中がこれだからな)」



右隣では一つ目がしたり顔をしている。ひそひそと何かを話しているが、鴆は聞き流すことにした。



「牛鬼、お前はどう思う?」

ぬらりひょんが牛鬼に話をふる。

「反乱をおこそうとしたガゴゼを斬り、蛇太夫を斬り・・・旧鼠を葬ったのはまぎれもなく若」

リクオの能力は疑いようがないとはいいつつも、一日の四分の一しか妖怪になれないことを指摘した。
そして、ゆっくりと考えていこうと言う。

どことなく、リユキの言っていたことと似ている。鴆は、それに賛成だった。

まだ結論を急ぐときではない。約束をして、借りもあるが、またリクオは覚醒してくれる。
それに、組のことを理解してくれる日がきっとくると信じている。

リユキの言葉を聞いてから、そう思った。


「(なんか説得力があんだよな、リユキに言われると)」







そんな会議の様子を影で聞いている者がいたことに、屋敷のものは誰一人気づいていなかった。








その日の夜。

「ねえ、リユキ姉、今日どうして学校休んだの?」

「リクオ、まだそれ覚えてたの・・・」

「猩影くんのためってどういうこと?」

「・・・それは・・・」

言うか言わまいか悩むリユキ。


「あ!毛倡妓」

「何です?若」

そこへ謀ったように毛倡妓が通りかかる。


「リクオ!なんで毛倡妓呼ぶの」

うーと困るリユキ。

「若ー」

「つらら!」

「どうしたんですか、みんなお揃いで」

「首無に黒田坊まで!」

みんなが集まってきてさらに困るリユキ。

「ねえどうして?」

なおもリクオは問う。

「っそれは・・・私が休まないと、猩くん学校行くでしょ・・・昨日、つき合せちゃったし・・・」

赤面するリユキに、ニヤリとする面々。
やっぱりねと毛倡妓。首無と黒田坊は確信犯。つららは偶然。


「そうか。リユキにも護衛をつけよう」

「若!?」
「リクオ!?」

「ん、何?姉ちゃん、みんな」

一瞬、夜のリクオが見えた気が・・・。
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