流水落花


□その四
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「リユキ様!」

リユキが部屋でくつろいでいると、牛鬼がやってきた。なにやら様子が変だ。


「どうしたの?牛鬼、そんなに慌てて」

一拍おいて、眉間のしわをさらに濃くして牛鬼は告げる。

「・・・それが、誠に申し上げにくいのですが、リクオ様とそのご学友が牛鬼組のある捩目山にいらしたところ、組の者がリクオ様とはつゆしらず攻撃をしてしまったと」

「え!うそ・・・」

「真にございます」

「それで、リクオたちは無事なの?」

リユキは身を乗り出して弟の無事を問う。
しかし、ここへ、リユキをわざわざ呼びに来たとなると、’’無事’’は期待できないとリユキは薄々理解していた。


「それが、かなりの痛手を負わせてしまいまして。リユキ様のお力をお借りしたく、やってきた所存です」

「わかったわ!すぐに向かうわ!」

とにかく、急がなければ。

慌しく、リユキと牛鬼は屋敷を出て捩目山に向かった。










「もう一度言ってみろ、バカ息子ども。牛鬼だと」

カラス天狗の部屋の前で、三羽鴉は任務の報告をしている。

「あくまで目撃情報だ。やったと決まったわけじゃねぇよ・・・・浮世絵町のカラスどもが見てた」

旧鼠のウラで糸を引いていたのは、牛鬼であった。判明した事実を述べる三羽。

「うむ・・・」

どうしたものかと考えていると、カラス天狗の傍らに置いてある携帯がなった。
それはリクオの側近でもある青田坊からだった。



「な、なんじゃとぉおお!?今・・・捩目山に向かっておるじゃとおおお!?」

青田坊はリクオを追って捩目山に向かっているところらしかった。

障子越しの父の絶叫に三羽は事の次第を知る。
捩目山は牛鬼組の本部が置かれる場所。
あろうことか、リクオはそこへ向かっているという。







「若菜様、リユキ様を知りませんか?今、猩影殿がいらして」

「リユキ? リユキ ならついさっき牛鬼さんと慌てて出掛けていったわ」

そして聞こえてきた首無と若菜の会話にカラスの親子は絶句する。

「若菜様、それは真ですか!?」
まさかと、黒羽丸は真偽を確かめる。

「黒羽丸くん、たしかお昼頃だったかしら」

「親父・・・」

「マズいな・・・」

顔をしかめるトサカ丸とカラス天狗。

「黒羽丸、猩影殿に知らせるか?」

「いや、本家以外に漏らすのは今はマズい」

ささ美の提案に、黒羽丸は冷静な判断を下す。

「うむ。そうだな。バカ息子ども、飛べ」


「「「はっ!」」」
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