流水落花
□その四
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「よぉ、リユキ!」
「あ、鴆くんおはよー」
「リクオの奴ァどこだい、一言話があんだ」
「リクオなら・・・」
「あーーダメです!リユキ様」
「カラス天狗?」
「リクオ様が血まみれにーー」
「え?」
今日も今日とて、奴良組本家は慌しかった。だがこの日の騒がしさはリクオが熱を出したからであった。
うーんうーんと唸るリクオ。リユキは妖怪化してその熱を癒そうかと提案するも、昨日の今日で組のものに却下されてしまった。
なのでリユキは毛倡妓とともに看病をしていた。
「リユキ姉、学校はよかったの?」
リクオは平日なのに、家にいるリユキを不思議に思ってたずねた。
「ん、たまにはねー」
それにへらっと答える リユキ 。
「だめだよ!ちゃんと学校行かなきゃ」
「今日はいいのよ」
”立派な人間”を目指すリクオらしい言い分だった。リユキはそれに悪びれた様子もなくそう言った。
「リクオ様、わかってませんねー」
今まで黙って聞いていた毛倡妓が話に加わる。
「毛倡妓?」
「リユキ様は、猩影殿のために学校を休まれたんですよ」
「え、猩影くん?」
「け、毛倡妓、なんで!?」
慌てだすリユキ。どうして毛倡妓が知っているのかと。
「わかりますよ、そりゃあ・・・」
毛倡妓がその先を言おうとしたちょうどそのとき、ガラっと戸をひいて鴆が入ってきた。
「ホラよ、薬持ってきてやったぞ。リユキもここにいたのか」
「ありがとう、鴆くん」
リユキは少しほっとしながら、鴆から薬を受け取る。
「情けねーのな、昼のおめーはよ。ちょっと気負いすぎて発熱か」
「鴆くんに言われたくないよ」
「今はおめーの方が重病だろ。借りがあんだ・・・・俺にはよ。期待してたんだよ・・・あーあ朝になればまた元通りか・・」
言いながら、鴆はその場にどかっと座る。
「なあ、本当に出入りに行ったことも覚えてねーのか」
「それは・・・・・」
「あーいい!いい!全部聞いてるよ、カラス天狗から。俺はな、あのお前に三代目を継いで欲しいと思ってんだぜ」
「ホラ鴆様、リクオ様は安静にしてないと・・・あなたこそ寝てなくていーんですか?」
「ち・・・・・家が修理中で渡り鳥なのよ」
会議の時間だと言って鴆は出て行こうとする。そこへこちらに向かっているような足音が聞こえる。
「あ、待って、鴆くん!」
リユキとリクオは慌てて鴆を止めようとするが、一歩遅かった。
ドシーン!
「若ーすいませんーー!私としたことが側近なのに!!」
雪女が飛び込んできた。リクオしか見えてなかった彼女は鴆を押しのけたことに気が付いていない。
「ぜ、鴆くん・・・大丈夫?」
「あいつ・・・キライだ・・・」
「鴆くん、お願い、もう少しだけ待ってあげて」
リユキは鴆が起き上がるのに手を貸しながら、こそっと言う。
「リユキ?」
「リクオのこと・・・」
リクオならきっと、とリユキは言う。
「・・・ああ、わかったよ。お前がそう言うならな」