流水落花


□その八
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リユキは、見知らぬ部屋で目を覚ます。
おそらく、先ほどのビルの中なのは間違いない。拘束こそされていなかったが、入り口には鍵がかけられ、これではまるで監禁である。
どうにかして外に出られないだろうかと思案したが、扉以外に外に通じるものはないようだ。
唯一外部と繋がる扉の横で、リユキはしゃがみこんだ。


後悔・・・。



頭に浮かんだのはその言葉だけだった。
何が、間違っていたのだろう。確かに、のこのこと自分から敵の本拠地にやってきて、これでは捕まえてくださいと言っているようなものだ。

でも、他に方法があっただろうか。
組のみんなを傷つけたくない。誰かが怪我するのはもう見たくない。

リユキの頭を支配し、行動を起こさせたのはこの思いだけだった。
それが、奴良組の弱みになることを死角に追いやった。
冷静に考えてみれば、わかること。リユキが捕まり、シノギの脅迫、よくて交渉に使われ兼ねないことは明白だ。


己惚れていた。自分なんかが下ったところで、奴良組から手を引くなどと、どうして信じたのか。


バカなやつ。玉章の部下の妖怪に言われた言葉を反芻する。本当に、バカだ。


これから、どうすればいいのか。このまま黙って捕まっているわけにはいかない。何か、何かできることはないだろうか。

――僕はね、リユキ。君のようなやつが一番許せないんだよ。君には権利があった。奴良組の跡取りとしての。それを君は無条件で手放したんだ。僕が、欲しくても手の届かないものを、生まれながらに与えられた権利を。

意識を失う前に聞いた玉章の言葉。



私は・・・。

考えを払拭して、言葉を飲み込んだ。









部活えを終えたリクオたちは下校途中だった。

「リクオ君だよね?」

突然、高校生二人に声を掛けられる一行。

「だ・・・誰!?」

ただならぬ雰囲気に後方の護衛たちも息を呑む。

「(高校生?・・・片方はリユキ姉と同じ制服だ・・・!)」

「いや、聞く必要はなかったか。こんなにも似てるのだから、僕と君は。若く、才能にあふれ、血を・・・継いでいる」

男はリクオの肩に手を置く。

「僕は今から全てをつかむ・・・僕もこの町でシノギをするから」

「(え)」

「まあ見てて・・・僕の方がたくさん’’畏れ’’を集めるから」

「ま・・・待って!」


男が去ろうとすると、今までいなかった者たちが現れた。

「何よ・・・アレ・・・今まであんなのいなかったのに・・・」



「着いたね・・・七人同行。・・・いや、八十八鬼夜行の幹部たち・・・やれるよ、僕らはこの地を奪う。昇ってゆくのは・・・僕らだよ。見てな・・・リユキ・・・」
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