流水落花


□その八
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リユキが抜け出した同じ日の夕方、奴良組本家で総会が行われた。

議題は、リクオの若頭襲名と牛鬼の件を裁くことであった。
ぬらりひょんとともに上座に座るリクオに一つ目入道はのっけから突っかかる。それを意にも止めずリクオは若頭襲名の挨拶をした。



鴆はそのリクオの堂々たる姿に感激した。

「リ、リクオ・・・・・・?」

あのとき、リユキが言った通りのことが起こった。
リユキの言葉を、なによりリクオ自身を信じてよかったと心底思った。


そして、牛鬼は無罪を言い渡される。
お咎めなし!と言ったリクオに、またも一つ目は突っかかる。
しかし、リクオの調子に乗せられてまんまと孤立してしまう。


「なんならお前もオレをためしてみるかい?牛鬼みたいによ・・・・・・」


追い詰められて言葉を失う一つ目。これにてリクオは無事に若頭を就任したのだった。









この総会に出席できていない幹部がいた。
狒々である。
彼は、奴良組の中でも古株で総会に出席しないことはほとんどなかった。

連絡の途絶えた狒々を不振に思った本家は三羽鴉に偵察に向かわせた。

関東大猿会本部はひどい有様だった。組員の生き残りはいない、屍しか残っていない。

三羽は唖然とする。

「うちのものではない『外部』の妖怪・・・・!!」

「風・・・そういえば良太猫の店で突然の『風』に襲われたという話を聞いたが・・・・」

「リユキ様が助けたというアレか・・・」

「未知なる敵勢力・・・か?」

「早急に本部に連絡だ!危機回避態勢を取れと!!『幹部』を厳重に警護するよう・・・親父に伝えろ!!」

三羽は奴良組本家へと急いだ。


黒羽丸は、飛びながらリユキのことを考えていた。

「(このことをリユキ様に伝えるべきだろうか)」

「黒羽丸、このことをリユキ様には・・・」

「・・・わからない・・・だが、いづれ知れることだ」

なにやら思いつめていたようなリユキにこのことを知らせるのは気が引ける。
しかも被害者は猩影の父、狒々だ。猩影との間に何があったかは定かではないが、できることなら隠しておきたい事実だ。
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