流水落花


□その九
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玉章が去ったあと、リクオたち奴良組妖怪も人目の届かぬところへひとまず移動する。

「リユキ姉・・・」

リクオは突然姿を消した姉のことが心配でならなかった。

先日、下校中に玉章と会ったあと、最悪な事態として彼らがリユキの失踪に関与しているかもしれないと考えてはいた。
でもまさか本当に、リユキが四国妖怪のもとにいるなんて。

「リクオ様・・・」

護衛の妖怪たちも、心境は同じだ。

どうしてリユキが玉章に付いていったのか、それは、先ほど玉章が言っていたことが真実なのだろう。
奴良組のシマとリユキ自身。リユキは迷うことなく、自身を捧げたに違いなかった。



首無は、ひとつ引っかかることがあった。

リユキは、いつ玉章と接触したのか。

学校や登下校は猩影が一緒にいたはずだ。
玉章がリユキにその条件を突きつけたとき、猩影が一緒にいたとしたら、間違いなくそんな危険なことはさせないだろう。
だとすると、猩影は知らなかったということになる。
いつだ。やつがリユキ様と接触し、騙し捕らえたのは。




「首無!聞いているの?」

「えっ?」
考え込んでいた首無は周りの音など聞こえていなかった。気づけば、自分の横にはリクオがいて、青田坊や河童たちは少し離れたところでこちらを伺っている。それも、なんとも微妙な顔をして。
そして目の前には雪女、それもかなり怒っているようだ。

「二人とも・・・私のマフラーどーしてくれるんですかーーー!!」

お気に入りだったのに〜〜〜とつららは続ける。

先ほど、犬神をあぶりだす作戦で、リクオに変装した首無の首元を隠すために使用したつららのマフラーには、首無の血が付いてしまっている。

他の護衛たちを見るが、先ほどと同じくなんともいえない顔で目を逸らされる。
だが、その様子で首無は理解した。
リユキが囚われているのを知って、動揺していたのは自分だけではない。
リクオはもちろん、雪女も、青田坊たちもそれは同じだ。今は、それを消化することはできない。
だから、敢えて触れないようにする。
雪女は、彼女は彼女なりに、リクオを励まそうとしている。

「若も!!なんで入れ代わったの言って下さらなかったんですか!!闇があれば昼間っからでも変化できるって事も!!」

「いや、ボクも知らなかったんだ。とりあえず・・・みんなぶっ飛ばされてオレが何とかしなきゃって思ったら・・・」

しれっとそのときのことを振り返るリクオ。
しかしリクオが変化できなかったらあの場は収まらなかっただろう。

「人間にバレるかもしれなかったのに?」

「やっぱバレるかな〜〜清継くんの演出ってことでギリギリセーフじゃない?」

次第にリクオがいつものリクオに戻っていく、と首無は感じた。

「絶対バレますよ!!」

「バレていーのかと思ってましたよ」

「首無〜もう学校来れないかも」

「だ・・・大丈夫じゃないですか〜」

今は人間である若頭らしい心配事だ。
首無は言葉の最後に小さく「どっちでも」と付け加えた。








「リユキ、話とはなんだ?」

「玉章、私、気づいたの。奴良組から離れて、少し頭が冷えたわ」

「ほぅ・・・」

「私にとって、玉章の、あなたの横にいる方が最善だと」

「そうか・・・。賢明な判断だよ」
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