流水落花
□その十
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緊急総会が終わった奴良組本家の縁側。長剣を携えて俯く人影があった。
「あれは・・・?猩影くん?」
その姿を見つけたのは雪女のつららと首無だった。
少し離れた場所からでも自分にかかる声が聞こえて猩影が振り返る。
「つららの姐さん、首無の兄貴・・・」
見るからに元気のない猩影。首無はあえて明るく振舞った。
「なんだか久しぶりだな、猩影」
「どうして今日は?」
首無もつららもわざとなのか、リユキのことには触れない。
父と狒々組を失い、恋人のリユキが攫われた。猩影が落ち込むのも無理はない。
「リクオ様に呼ばれたんです」
そう言って、猩影は一瞬、貼り付けたような笑顔をみせた。
「今まで・・・もうこの本家にこういう形で来ることはないと思ってた。妖怪の世界でやっていくことも・・・でもリユキ、さま、がやつらに捕まって、実家があーなっちゃって・・・自分の血が滾んのを感じたんです」
次第に表情は激しくなり、拳を握る手に力が入った。
「俺、なんであのときリユキを止めなかったんだ!あいつのやりそうなことなんてわかってたのに・・・」
悔いる猩影の怒りを、首無たちは止められない。
「リユキを捕まえて、親父をあんな目に会わせたやつら・・・俺が同じ目に会わさなきゃ、血が・・・おさまんねぇんだ!!」
ぽたりと落ちる猩影の血。
怒りに任せて噛んだ唇から流れた血を見て、やっと首無は動けるようになった。
「猩影!落ち着け!!」
場面は再び、四国勢の拠点であるビルに戻る。
崖涯小僧を自らの畏れで操り、牛頭丸と馬頭丸は建物の上階を目指していた。
「急に警備増やしやがって。さっさと仕事片しちまおーぜ」
そう言う牛頭丸に対して馬頭丸は心配だった。
「(牛鬼様に言われたのは”敵の次の手”と"戦力”を調べること。でも牛頭は、”戦力”を拡大解釈してあの『刀』を調べようとしちゃってる・・・それに、リユキのことも牛頭は心配なんだ)」
確かにリユキのことは気になるけど、どうしよう。もうあとにはひけないぞー。
咎めようにも咎められない、牛鬼組若頭の行動は、補佐役馬頭丸の心配をよそにさらにエスカレートしていく。
「大丈夫だよ。俺たちは『怵』の大紋の妖怪。こういうのは得意だろーが!!」
「頼むよ牛頭〜」