流水落花


□その十四
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「お・・・・・おたすけえええ〜〜〜」

リユキはどこかで助けを求める声を聞いた。
どこからかはわからない。聞こえてしまったのだから、放っておくこともできない。
猩影を伴って、声のするほうへと足を速めた。

開けたところに出ると、一匹の妖怪が池に向かって泣いている。助けを求めたのはこの妖怪のようだ。

「どうかしたの?」

リユキは何の警戒もなしに、妖怪に近づき、そう訊ねた。
その様子に少し遅れてついてきた猩影はハラハラした。気が気じゃない。

「おいらのよめっこがぁ〜〜池に連れて行かれた〜〜」

池?二人揃って池を見る。
すると、池の中央付近に別の妖怪が浮かんでいる。

「おいてけ〜〜〜おいてけ〜〜〜」

「助けて〜あんたーーー!」

浮いている妖怪の腕の中に、また別の妖怪がいる。
彼女は、おそらく岸の妖怪の”よめっこ”で、助けを求めている。

状況が飲み込めたリユキと猩影は、どうするべきか考えた。
しかし、いい案は浮かばない。実力行使で池の妖怪を倒すにも、そこまでたどり着けない。

「ねえ!お願い、その子を返してあげて!」

リユキは、交渉という手段を選んだ。できる限り大きな声で池の妖怪に呼びかける。




「嫌だね〜アタシはここを通る幸せそ〜〜な奴から大事そうなモンをぶんどるのが楽しいのさ」

簡単には返してくれそうにない。うーんと、リユキはいい方法がないかまた考え始める。

「そうだな〜〜返して欲しけりゃコレより楽しいモン寄越しなぁ〜〜〜」

「楽しめるもの?」

リユキは自分の持ち物から、池の妖怪に渡せそうなものがないか、思案する。

そうして考え込んでいると、池の妖怪がリユキ目掛けて飛んでくる。それを目にした猩影が、彼女の身を守ろうと、リユキの前に立ちはだかった。

「リユキ!」


リユキは、目の前の状況が理解できなかった。
池の妖怪が自分を目掛けて飛び込んでくる。
驚いて、動くより先に愛しい人の背中が見えた。

次の瞬間、自分の腕にはさっきまで池の妖怪に捕らわれていた、女の妖怪が飛び込んできていた。


彼の姿はなかった。






「首無、どうしよう。猩くんはきっと、池の中だ」

「落ち着いてください、リユキ様。猩影ならきっと大丈夫ですよ」

言いながら、リユキの話から推測される妖怪に見当をつける。

「そいつはきっと、”置行堀”ですよ。通行人の一番大事なものを取ってしまう」
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