流水落花


□その十六
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「リユキ・・・」

自分を呼ぶ声がして、リユキは顔を上げる。今までただ白いだけの空間だったのに、そこに淡い光が現れた。

それは次第に、人の形を持った。そうしてまた聞こえた呼び声。今度は目の前の“人”から、確かに聞こえた。

「リユキ、はじめましてですね」

着物を着た美しい女性がリユキの前に立っていた。

「あなたは、だれ?」

「私はあなたの祖母です」

「祖母・・・珱姫様!?」

「珱姫様だなんて、妖様をおじいちゃんと呼ぶように、おばあちゃんと呼んでください」

珱姫は花の飛ぶような笑顔でリユキに言う。
リユキは困り果てた。目の前の珱姫はとても若い容姿をしている。そんな人相手に、おばあちゃんだなんて呼びにくい。渋っていると、さあ!とリユキを促す珱姫。

「お、おばあちゃん・・・?」

しぶしぶ呼んだが、抵抗を感じる。そんなリユキに、珱姫はとても嬉しそうに笑う。リユキもつられて笑う。

「やっと、笑いましたね。リユキは笑顔が可愛い子です。ずっと笑っていてください」

ずっとという言葉にリユキはひっかかりを感じる。

「でも、おばあちゃん・・・私、死んじゃったんじゃないの?」

ここが死後の世界なら、珱姫と会ったこともうなずける。死んでしまったのに、笑顔でいろだなんて。

「いいえ、リユキは生きていますよ。陰陽師の攻撃でリユキの妖怪の部分がひどい怪我を負ってしまったんです」

リユキは珱姫の言葉に安堵する。

「回復には相当の時間がかかるでしょう。今の奴良組に私やあなたのように治癒の能力をもった方がいればいいのですが・・・」

「そう、なんだ・・・。また、心配をかけてしまう」

「大丈夫、私もできる限りにことはしましょう。ただ、その間、あなたに少し聞いてほしいお話があります」

珱姫は一度目を閉じるとゆっくりと開いて、リユキをまっすぐに見た。
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