流水落花


□その十九
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「邪魔するぜ」

リクオは遠野妖怪の夕食の席に姿を現した。

淡島や雨造たちはリクオがもう出て行ったとばかり思っていたので、リクオの行動に慌てた。

リクオは黙って赤河童の前に腰を下ろす。

「てっきり勝手に出て行くものだと思っていた。死んでないってことは多少は強くなったんだろ?」

周りのざわめき、赤河童の言葉も無視して、リクオは頭を下げ礼を述べる。

「短い間でしたが遠野の皆様方には昨今駆け出しのこの私の為に稽古をつけてくれたこと、厚く御礼申し上げたい」

奴良組若頭からの礼に一同は関心する。その挨拶を揶揄するように、赤河童は奴良組の弱体化を指摘する。

「先代を失ってからの奴良組は弱体化の一途をたどっているのにな・・・お前は何も知らんか」

「八年前、目の前で親父が殺された時、オレは恐らく羽衣狐に会っている。姉のリユキもだ」

広間は騒然とする。

「あの時を境に奴良組は弱体化し、逆に関西妖怪が勢力を伸ばし始めた。この因果が偶然じゃねぇとしたら、親父を殺ったのは羽衣狐だ」

リクオは、つい先日知った事実をまだ飲み込めていなかった。

「オレの姉は、奴らに狙われているかもしれない・・・だからあの女にもう一度会いにオレは京都に行く。この深い因縁を断ち切るために!!」

「オイオイ、超美人の友達を助けるためだけじゃなかったのかい・・・」

「見ものじゃな!!」

「妖の主をめぐる一大決戦!」

わぁっと盛り上がる遠野妖怪にリクオがカマをかける。

「なんだ?こん中にオレが魑魅魍魎の主となる瞬間を一番近くで見てぇ奴は誰もいねぇのか?」

「どういう意味だ」

「こんな山奥でえらそーにしててもそれこそお山の大将だ。京都についてくる度胸のある奴はいねぇのかって聞いてんだ」

バカにされること、下に見られることを嫌う遠野妖怪は、リクオの言葉に逆上する。

リクオは自らの畏で赤河童の膝に乗り、その空の盃に酌をする。

「世話になりやした。これにて失礼」
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