流水落花


□その二十七
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「何?猩くん」
昼休み、昼食を食べ終わったときのこと。今まで和やかに会話をしていた猩影が、改まってリユキに声を掛けた。その様子を察して、リユキも表情を引き締めた。

「聞いてほしいことがあるんだけど」
「うん、今ここで?それとも場所変える?」
「うーん…」
どうにも、切り出せない様子の猩影。

「組のこと?」
声量を抑えて聞く。
「あ、ああ。そう」
リユキは、ふっと息を吐き出した。
「私にできることならするわ」
「まだ迷ってて、誰に言ったらいいのかも、わからなくて、さ」
猩影は続けた。

「狒々組の端の方、えーと地名でいうと埼玉の川越の辺りなんだけど、どうも様子がおかしいんだ」
「おかしい?」
「妙な噂が広まっててさ。夕暮れに十四、五歳の人が消えるって」
「それって神隠し?それとも妖怪の仕業?」
「わからない。とにかく畏が届かねぇ。組の妖怪がコソコソやってんのか、外部が絡んでんのか」
「どっちにしろ『人に仇なす妖怪』だね。だったら…」
リユキが猩影の手を取る。

「三代目に相談したら?」
「でもそんなことで、三代目の手を煩わせるわけには」
「そんなことないよ。リクオを頼ってあげて。それがリクオの自信にもなるよ」
すっかり姉の顔をしたリユキ。

「今日の放課後、中学校に行ってみよ」
「え、本家でいいんじゃ」
「善は急げ!あ、校門で待ち伏せしよー」
「ちょっとリユキ!マジメに頼むよ」
「マジメだよ。善は急げっていうのは本当で、リクオ、最近忙しくしてるから、本家だと後回しになっちゃうかもよ」
それに、とリユキ。
「相談されたら、リクオも嬉しいと思う」
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