流水 番外編2

□長身ゆえの
1ページ/1ページ

「おっと・・・あぶねぇな」

猩影は長身ゆえに足元が疎かになることがある。例えば今のように小さな子どもが駆け回っているときには、間違って蹴ってしまわないように注意を払う必要がある。脇見をしていたり、他に気を取られたりしていては危うく子どもを踏んづけてしまう。


手にはたまごを持っている。お遣いの帰りだった。

「っと・・・う、うわあ・・・!」

子どもを避けようとして、足の着地点を変えたときだった。足元にあった小石に気づかず、小石を中途半端に踏みつけてしまう。予想できなかった衝突に足首がぐきりとおかしな方向へ曲がったが、頭は冷静に、手に持った物の存在を思い出した。するとどうだろう、2メートル25センチの巨体があっさりと地面に伏した。

「いってぇー!!」






「猩くん?!」
びっくり。リユキは無遠慮にそんな表情を作った。目を大きく見開いている。

「血が止まらねぇ」
顎を押さえている手は血で赤くなっている。

「何があったの?」
「近道しようと思って」
リユキは猩影から手に提げている袋を受け取る。

「公園を横切ったんだ。子どもが遊んでて」

そこまで言えば、リユキには何があったのか想像がついたようだった。まさか、という顔をしている。

「避けようと思ったら石に躓いて、転んだ」

何を思ったか、視線を逸らしたリユキは次の瞬間苦笑した。

「困ったものね、その身長も」
「好きでこうなったんじゃねぇよ」
「はいはい。ほら早く座って、手が届かない」

傷に手を翳せば、あたたかい光が傷を癒す。
こういうことは初めてじゃない。はじめこそ心配していたリユキだったが、最近はそんな様子もない。酷い話だ。

「やっぱり私が一緒じゃないと」
ふふっと笑って、治癒を終えた傷口に付いた血を拭ってくれる。

「へっどーせひとりじゃ道も歩けねぇよ」
「そこまで言ってないよー」
「顔にそう書いてある」
「そうじゃないよー機嫌直してよ」
「なんだってんだ」
「猩くんの下方安全は私が保障してあげるって」
ポンと胸を叩くリユキ。
「・・・おんなじだろ」
「そうかも」
「はあ〜。ま、上から降ってくるもんはオレがなんとかしてやるよ」
「頼もしい!」



[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ