流水落花


□その九
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「申し上げます。浮世絵町より璞町、各方面にて妖怪が暴れているとの情報にございます」

リクオが夕食をとっていると、組の者が報告にやってきた。

「(あいつらだ・・・まさか、ボクらを直接攻撃するとかじゃなく、人間を襲うなんて)」

考え込んで箸が止まったリクオのおわんからカラス天狗が現れた。

「そんなところで何してんのカラス天狗!!」

「総大将がどこにもいないんですよぉ〜〜〜〜〜!!」

「おじいちゃん?いつものことじゃん」

「違います!今回ばかりは私が目を離したから!きっとヒヒ様をやった奴らに〜〜〜!!」

カラス天狗は慌てているようだが、リクオはそんなバカな・・・と思っていた。

「だってだって、みんなも言うております」



外に通じる戸を開けると、確かに庭先ではちょっとした騒ぎが起きていた。

「西じゃ!!西の者に違いない!」

「ヒヒ様を殺した手だれ!!今ごろ総大将も・・・」

「リユキ様もいない!!きっとそやつらに攫われたのだー!!」

「これより奴良組はワシが代理でしきる!!たとえ総大将がいなくともしっかりせんかーーー!!」

この状況を見兼ねた木魚達磨がうろたえる妖怪たちに渇を入れる。
しかし、その言葉により総大将がいないことが真実だと知った妖怪たちには逆効果で、さらにその場は混乱する。


「妖・・・怪が!!おたおたすんじゃねーーーーー!!」

今まで黙って様子を伺っていたリクオが、我慢の限界と言わんばかりに荒声を上げる。
意外な人物の大声に、あれほど騒いでいた妖怪たちは静止する。

「人々から畏れられる存在なんだろう?じーちゃんはどっかで遊んでるだけだ。姉ちゃんだって絶対無事だ。はっきりしてんのは・・・敵が土足でボクらのシマを踏みあらしてるってこと」

「わ、若・・・?」

「入って来たんなら退治するだけだ」

昼の姿のリクオからは想像もしたいなかった言葉と態度に妖怪たちはあっけにとられる。
カラス天狗は感涙している。




「達磨・・・てめーがしきんのは筋違いだ。奴良組は今から、若頭がしきる!!」
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