流水落花・・・番外編

□お転婆娘の散策道中
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「リクオー!お姉ちゃんと遊ぼうよ」

よく晴れた昼下がり、リユキはまだ幼い弟リクオを遊びに誘う。

「うん!あそぶ!!」

リクオは姉が大好きだった。こうしていつも遊んでくれる、優しい姉。リクオにとってリユキはぬらりひょんに次いで憧憬の存在なのである。

「じゃあかくれんぼね!私を見つけたらリクオの勝ち!よーいはじめ!」

「わかった!いーち、にー、さーん、しー・・・」

鬼はいつもリクオ。覚えたての数字を10まで数えてリユキを探し出すが、リユキは絶対に見つからないのである。

「おねえちゃーん!どこー?」

リクオは毎度、毎度見つからない姉をそれでも懸命に探すのだ。





「リクオ様、リユキ様を見ませんでした?」

傍から見ればリクオが一人で屋敷内をうろちょろと遊んでいるように見える。はて、姉のリユキはどこにいるのだろう、先ほどまで幼い姉弟二人分の高い声が聞こえていたはずだ。
側近たちがリユキの姿がないことに気づくのには、そう時間はかからない。

「今さがしてるの!かくれんぼだから」

「かくれんぼ!?・・・またリユキ様に逃げられた」

側近が慌てるのも無理はない。ここ最近、リユキがリクオとかくれんぼをすると必ず屋敷から抜け出していた。
はじめこそ、側近たちもかくれんぼで隠れているのだと、リユキの姿が見えないことに納得していたが、夕方近くになって屋敷に戻ってくるリユキを見つけてからは、かくれんぼは屋敷の外に出るための口実にすぎないことを知った。


幼いながらに側近の目を潜り抜けて外の世界に繰り出していくのは、実に彼女の父親にそっくりであった。リユキの場合はただ抜け出すのではなく、リクオを巻き込み、口実を作っていることをあげれば鯉伴より一枚上手なのかもしれなかった。
その上やっかいなことに、姉を慕っているリクオは、リユキを探そうとする側近たちを許さなかった。リユキとかくれんぼをしているのは自分である、探していいのは自分だけだ、と。


そんな側近とリクオのやりとり、そしてリユキの逃亡劇を見て、唯一笑っているのは彼女らの父、鯉伴である。

「結構なことじゃねぇか。リユキだってずっとここで大人しくしてるのがいやなんだよ」

朗らかに言う鯉伴に、首無はついに怒りを爆発させた。

「鯉伴・・・てめぇそれでも親か!リユキ様にもしものことがあったらどうするつもりだ」

「首無、口調が昔に戻っているぜ」

首無は鯉伴にそれだけ言うとリユキを探しに本家を飛び出していく。
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