流水落花・・・番外編
□モノローグ
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あいつが初めて牛鬼組にやってきたのは、あいつが3つかそこらのころ。言葉だってまともに話せない(牛頭丸だって何回も言ってるのに、ごじゅまるってなんだそれ)のに、俺たちの前ではじめてやって見せた「明鏡止水」。
こんなちびっこいやつがと思ったが、こいつも立派に妖怪の血が混じってるっていうことなんだろう。
あのときは行方不明になりかけたことで、世話をしていた俺と馬頭が大目玉を食らうところだった。二代目のやつ、あいつが畏れを使ったと知るや否や途端に破顔しやがって。
あの初めてあった日以来、あいつはちょくちょく牛鬼組にやってきた。二代目が牛鬼様に用事があるとはいえ、大騒ぎ一歩手前になった場所へまたのこのこ子どもを連れてくるなんてと思ったが、馬頭の奴は嬉しそうだった。同じレベルの遊び相手ができたことが嬉しいんだろう。
「ごじゅー!めじゅー!!」
稽古をしていれば、道場の扉をばんばんと叩く音がする。
「リユキだぁ〜〜!!」
馬頭丸は稽古そっちのけでリユキを構う。
「おい馬頭丸。稽古の途中だぞ」
「リユキ!今日は何をして遊ぼうか〜?」
あいつが来ると馬頭丸は俺の話なんか聞かない。
「これー!」
リユキはかるたを取り出す。
「わぁかるたかー!懐かしいや。牛頭ー!」
まあ牛鬼様が道場に行くようにリユキに言ったのだろうから、これも主の命令とあらば俺は従うだけだ。
「はあ〜。馬頭丸、お前が読み手だ」
「え〜〜〜!牛頭ずるい!!」
人間は面倒だと思う。時期が来て、リユキは学校とやらへ通うようになった。おそろいの鞄を背負って学校へ行く。新しい友達ができた。学校ではこんなことを習う。給食の当番になった。リユキからの手紙はそんな人間界の報告ばかりになった。
自然、リユキが牛鬼組にやってくることも少なくなった。
「牛鬼様ばっかりリユキに会っていいなあ」
「子守がなくなって清々した」
「牛頭だってリユキと楽しそうだったじゃないか〜!」
馬頭丸は毎月せっせとリユキに手紙を書いている。牛鬼様が奴良組総会に出席されるたびに手紙を届けてもらっている。
「『牛頭も元気だよ』っと」
「余計なことを書くな!」
「なんでだよ、牛頭、返事書かないから僕が代わりに書いてあげたんだろ〜〜!」
「いいから!」